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XAFS 実験法. 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 野村 昌治. 1. XAFS を測定できるかの判断 2. XAFS 実験法 透過法: 原理、試料作り、高次光、グリッチ、不良解析 蛍光法: 原理、蛍光 XAFS 用電離箱、半導体検出器 転換電子収量法: 原理、実験装置 軟 X 線領域での実験: 真空中での実験、 He 中での実験 3. 実験装置 放射光: 特徴、光学系、測定系 実験室系 4. 放射光の利用.
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XAFS実験法 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 野村 昌治 1.XAFSを測定できるかの判断 2. XAFS実験法透過法: 原理、試料作り、高次光、グリッチ、不良解析蛍光法: 原理、蛍光XAFS用電離箱、半導体検出器転換電子収量法: 原理、実験装置軟X線領域での実験: 真空中での実験、He中での実験 3. 実験装置放射光: 特徴、光学系、測定系実験室系 4. 放射光の利用
吸収端・XAFSの干渉Ti K端(4.96keV)Cs LIII端(5.01keV)Ba LIII端(5.24keV)k~8.6A-1表をチェックする XAFSを測定できるか • 濃度的に測定可能か • 見たい情報を得られるか (表面、バルク…)→ 実験法の選択 • テープ(糊)中の不純物Br, S, Cl in Scotch tape • ガラス中の亜鉛、Be中のFe • C中のFeとCo、ZrO2中のHfとPt • Pt、Auと水銀汚染
・ XAFSの原理にほぼ忠実 本来は試料の有無による強度変化を測定するが、多くの場合同時測定している。 I0 = IIN {1-exp(-m0x0)} I = (IIN-I0) exp (-mSX) mt = ln(I0/I) = ln {1-exp(-m0x0)} + m0x0 +mSX 下線部のみが試料の吸収を反映している。 P. 86, 92, 94, 174 透過法 IINI0I 放射光 電離箱 電離箱 実験室 電離箱 SC 比例計数管 SSD Sorry. Notations are different from the text.
XAFSは非常に小さな信号を解析している XAFS信号c XAFS信号の抽出knc = kn(m - m0)/ m0 k = {0.2625(E-E0)}1/2 E:eV、 k:A-1 粉末 103 = 1000 123 = 1728 153 = 3375 水溶液
I0の検出効率 (mx)0 = 0.245 試料の吸収 mX=2.55 でS/Nが最大 S/N = 0.556 DmA/m (IIN)1/2 DmA : XAFS振動成分 m : 試料の全吸収 IIN: 入射光子数 Iの検出効率 0.9~<1 IIN=8×107ph/s ×10s (mx)0 = 0.12 k3c=1A-3 at k=16A-1 銀箔のk=16A-1付近でのS/N比 P. 94 試料の最適厚さ 通常の放射光を用いた実験では それ程神経質になる必要はない 光子数が少ない場合は重要
X線は強い方が良いか • 光子の統計精度でS/Nが決まる場合はyes • 光子密度が高いと試料が損傷を受けることがある(KMnO4、有機物…) • 多くの場合は光子統計以外でS/Nが決まっている(試料の調製、高次光…)
高次光の影響を抑制 ・ 測定域中の真のmtの最大値を4程度以下 光学スペクトルでecl<4と同様 吸収端でのジャンプ( Dmt)を余り大きくしない (<2) Dmt~3 吸収端前 2V ↓ 吸収端上 0.1V 検出系のdynamic range 試料によってはスペクトルの両端での強度差 試料厚さの制約 P.95
I/I0 =exp(-mMrx) = exp(-mx) mM : 質量吸収係数 (cm2/g) m: 線吸収係数 (cm-1) r : 密度 (gcm-3) x : 試料の厚さ (cm) mM = SmMi Wi=Cl3ーDl4 0.1mol dm-3のCu水溶液の例 P. 95 試料厚さの算出 4.0 t =5.4mm Dmt=0.1 3.91 0.01moldm-3 4.0 t = 4.4mm Dmt =0.7 厚さを求めるソフト SAMPLEM http://pfwww.kek.jp/nomura/pfxafs/soft/presoft.html 3.3 0.1moldm-3
均一で、適切な厚さの試料を 溶液試料 試料の調製 P.96 粉末試料 • 400mesh以下の粉末を塗布したテープを数枚重ねる • ペレットを作る(BN、PE、セルロース等で希釈) • メンブレンフィルターで濾過 • 濃度の低い場合はセルに詰める • セルに詰める(窓材としてはカプトン、ポリスチ、ポリプロ、アクリル、石英) • ポリ袋に詰め、厚さ調整 • 厚さ可変セルも • テープ(糊)中の不純物Br, S, Cl in Scotch tape • ガラス中の亜鉛、Be中のFe • C中のFe、ZrO2中のHf • Pt、Auと水銀汚染
X線は物質を透過する? X線は物質を透過するという思いこみを捨て、数値を当たる!
2d sin q = nl (n = 1, 2, 3…) 消滅則の利用 高次光の割合 a:1×10-1、b: 2×10-3、c: 6×10-5 <10-4を目安に a: Ti(5mm) + Al(30mm) b,c : Ti(5mm) + Al(60mm) P.91, 98 高次光
モノクロメーターに由来し、I0に観測されるスパイク構造モノクロメーターに由来し、I0に観測されるスパイク構造 ・ 検出系のオフセットが正しく、直線性が十分に高い ・ 高次光、迷光が無視しうる ・ 試料が適切な厚さ ・ 試料が均一 な場合は通常は割り切れる 偏光面の回転が起こる P.97 glitch 正しい条件で実験しているかの指標 内部エネルギー標準
不均一な試料 不純物 銅箔 Cu 銅粉末 悪い測定例(1) 予備的な解析を 振幅が違う 亜鉛
厚すぎる試料 妨害物 悪い測定例(2) Fe(5mm)+Al(360mm) Fe(2.5mm)+Al(180mm)
不良データ対策 Glitchが割り切れない 吸収端が観測されない • 試料は均一か同程度の吸収を持つ金属箔(アルミ箔)を測定。金属箔では割り切れていれば、試料の均一性の問題。 • 高次光は無視しうるか金属箔でも割り切れない。試料を薄く(thinner)してみる/厚くしてみる。厚さを変えてもスペクトルが重なれば別の理由。 • 妨害物はないかX線ビームの像を観測 • 金属箔で比較分光器の角度較正不良分光結晶面、面間隔の勘違い • 本当に試料に含まれているか スペクトルがノイジー/形状不良 • 試料の均一性 (Iのみ) • 検出系の不良 (I0/Iを交換してみる) • 震動源がある • 発熱源があり、温度ドリフトしている • 検出系の飽和、オフセット調整不良
透過法実験で重要なこと • 均一で、適切な厚さの試料を調製する。 • 高次光を10-4以下に抑制する。 • 入射スリット後はX線ビームを切らない。 • 取説に従い、検出系を正しく使う。
透過法 ○原理に忠実 ●感度に限界 wt% 蛍法 ○高感度 ~10ppm ●スペクトルが歪み易い 10mmoldm-3 Cu aq. P.100 透過法の限界 10mmoldm-3 Cu aq.
蛍光X線量が吸収X線量に比例することを利用 高感度 試料の均一性に敏感でない 基本的にバルクの情報 P.100 蛍光法 適用対象に制約 ・ thick and dilute希薄試料 ex. 0.01mol dm-3 aq. ・ thin and concentrated薄膜、吸着層 ex. 1000Aの薄膜
[基本] 透過法で測定できる試料は透過法で。[基本] 透過法で測定できる試料は透過法で。 境界の目安 eW/8p > mA/mT e~0.5 (Ga)、 W/4p~0.15 0.3wt%のCu/SiO2 0.02 mol dm -3のCu aq. 蛍光法 P.100 透過法か蛍光法か 透過法 0.01 mol dm -3Cu aq.
P. 102 悪い例(厚すぎる試料) 蛍光法t0.5 透過法 透過法以外は正しいスペクトルでない。 標準試料の測定に要注意 蛍光法6mm 蛍光法2mm 金属銅
P. 103 蛍光XAFS用電離箱Lytle detector 波高分布 PHD 弾性散乱 生データ Cu Ka Ni filter 使用 Ni Ka Slit assembly 使用 E 安価、大立体角、手作り可能 0.2mmol dm-3 Cu aq.
フィルターやスリットではなく電気的に波高分析フィルターやスリットではなく電気的に波高分析 S/N = S/(S+B)1/2, S/B~1/200 蛍光X線と散乱X線の分離がキー P. 104 半導体検出器(SSD) エネルギー分析、調整・保守に手間、高価、数え落とし補正が必要 4×10-4 Au in AgX 蛍光XAFS用電離箱 多素子半導体検出器 19素子SSD
P. 111 転換電子収量法(CEY) • Auger電子収量が吸収X線量に比例することを利用 • 高感度 • 試料の均一性に敏感でない • 基本的に表面近傍の情報(数十~数百nm) 厚膜向き 主に手作り、安価、S/Bは余り良くない ガラス基板上のFe3O4 (t<1mm)
真空下での実験 透過法 :吸収係数が大きく、一般的には困難メッシュ等の光電流、Photo Diode 蛍光法 : 量子収率は低いがS/Bは高いPhoto Diode、PC、SSDフィルターはない 電子収量法(AEY/PEY/TEY):表面敏感、チャージアップCEM、EM、ドレイン電流 P. 115 軟X線領域での実験
軟X線領域での実験 従来はUHV中で電子収量法 最近ではHe雰囲気中で 転換電子収量法 蛍光法 も可能に ガソリンエンジン油中の添加剤 粘着テープ中のイオウ、塩素 石炭中のイオウ Li電池電極中のイオウ 空気中のアルゴン He flow
Scotch tape coal 蛍光法とCEY法 MoS2 蛍光法では自己吸収のため歪んでいる TEY
標準的な環境 硬X線領域では ・ 大気中/He雰囲気中/真空中 ・ 室温下/低温下(~10K) 実験の要求に応じて 高温(電気炉、ゴールドイメージ炉) 全反射蛍光法(大気下) 偏光依存 マイクロビーム(SPring-8) 円偏光利用 準備をすれば 極低温下(液体He) 高圧下(ガス加圧、超臨界、亜臨界、DAC、プレス..) 全反射蛍光法/転換電子収量法 in -situ環境下 時間分解実験(s~ms) P. 162 試料環境 法を順守し、安全を確保できればwhere there’s a will, there’s a way.
In one trip to the synchrotron we collected more and better data in three days than in the previous ten years.(F.W. Lytle, J. Synchrotron Rad., 6, 123 (1999)) 国内の放射光施設 P.83 XAFSと放射光 • 強い、指向性の高いX線源 • 連続的なスペクトル • 直線偏光 • パルス光源 • 安定な光源 • 分業が進んでいる Photon Factory(2.5GeV) PF-AR(6.5GeV) UVSOR(岡崎、0.75GeV) Rits (立命館大、0.58GeV) SPring-8(西播磨、8GeV) Saga LS(鳥栖、1.4GeV、建設中)
放射光施設 Photon Factory
放射光実験施設 実験ハッチ 結晶分光器 インターロック操作盤
I0-monitor I-monitor sample 放射光施設でのXAFS実験 hn hn slit hn
放射光のスペクトル Brilliance ph/sec/mm2/mrad2/0.1%bw 一般的なXAFS実験にとっては光子束の方が重要
分光光学系 集光光学系 高次光抑制 放射線安全 蓄積リングの真空保護 二結晶分光器 集光鏡 シャッター 実験ハッチ P.86 ビームライン
光源の差(施設、挿入光源) 運転条件 分光結晶 集光系 窓、フィルター Si(111) Si(311) P.91 得られる光子束 必ずしも強度が大きい方が良いとは限らない ・ エネルギー分解能 ・ 放射線損傷 ・ ビームサイズ
Braggの式 2d sin q = nln=1 基本波 n>1 高次光、高調波 エネルギーと波長の換算 El = hc = 12398.52 [eV A] 高次光の抑制 detune 集光sagittal focus P.88 二結晶分光器 D const. channel-cut mono. h const. 狭義の二結晶分光器
分光結晶による差 エネルギー分解能 スリットサイズによる差 Si(311) • 光源サイズ • 分光結晶 DE=-Ecotq dq • 受光スリットサイズ Si(111)
集光/コリメーション 1m程度の長さの凹面鏡 母材:Si、セラミックス、溶融石英 表面:Rh、Pt、Ni... 高次光抑制 反射率のエネルギー依存性 P.88 ミラー 二結晶分光器 集光ミラー
電離箱 X線による気体の電離。 平行平板型構造 イオンと電子の再結合を防ぐため電場を印加。 P.92 検出系・制御系 十分なエージング 応答の直線性の高い部分を利用 回路系のオフセット補償
http://pfwww.kek.jp Photon Factory SPring-8 http://www.spring8.or.jp/
UVSOR(分子研) http://www.uvsor.ims.ac.jp/default.htm HiSOR(広島大) http://www.hsrc.hiroshima-u.ac.jp/ Rits(立命館大) http://www.ritsumei.ac.jp/se/d11/
Disadvantage 1. X線強度が低く、測定に時間がかかる 2. エネルギー分解能が低い 3. 発散ビーム 4. 無偏光 5. 保守、調整は自己責任 P. 170 実験室系XAFS装置 • Advantage 1. 時間的、距離的な制約が少ない(必要時に測定できる) 2. 教育目的に使える 3. 機密保持 4. 試料環境を自由に設定できる 5. 無偏光 メーカー リガク http://www.rigaku.co.jp/ テクノス http://technos.co.jp
X線発生装置 Io検出器 受光スリット I 検出器 シャッター サンプル 湾曲結晶 ラボXAFS装置の例
ラボXAFS装置の現状 • エネルギー範囲 • 5 ~ 25keV • 大気中での測定がメイン。高エネルギー領域(>20keV)ではエネルギー分解能が低下する。 • 測定時間 • 1時間~1日 • 金属箔等は、1時間程度できれいなデータが得られる。実サンプルで蛍光法測定をした場合は、半日から、1日程度積算しなければ、解析可能なデータが得られない場合もある。 • 検出限界 • 0.1wt%程度? • 発生装置の出力や測定対象物にもよるが、一般的には、これくらいが限度か? 過去には、5mMのFeCl3水溶液のXAFSをラボで測定した例もある。
大学等からの利用 企業等からの利用 放射光施設の利用 • 申請書を提出し、審査。採択されれば実験できる(無料)。 • 有効期間は2年(PFのG型)、1年(PFのP型)、半年(SPring-8、UVSOR) • 旅費を支給(PF、予算の制約あり)、宿舎あり • 海外にもオープン • 成果非専有は無料(SP8) • 施設利用(PF、76890円/hr) • 成果専有は有料(SP8、59000円/hr) • 民間等との共同研究(PF) • 専用BL建設 Photon Factory http://pfwww.kek.jp SPring-8 http://www.spring8.or.jp/ UVSOR http://www.uvsor.ims.ac.jp/default.htm