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岩国市の救急医療を 崩壊させないために 岩国市の救急医療の現状 玖珂郡医師会 吉岡春紀 平成 23 年 10 月 12 日 玖西地区医師・ケアマネ連絡協議会. 日本の医療崩壊の実態 なぜ地域医療は崩壊したのか 1. 医療費抑制政策による診療報酬引き下げ の影響 平成 18 年の医療制度改革法案 ( 小泉改革・ 聖域なき構造改革 ) により医療費は 1.1 兆円 (5 年間毎年 2200 億円 ) の削減となった。. 2. 平成 16 年から導入された新医師臨床研修 制度 による医師の偏在と医局制度の崩壊. 1. 医療費抑制政策による診療報酬の
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岩国市の救急医療を 崩壊させないために 岩国市の救急医療の現状 玖珂郡医師会 吉岡春紀 平成23年10月12日 玖西地区医師・ケアマネ連絡協議会
日本の医療崩壊の実態 なぜ地域医療は崩壊したのか 1.医療費抑制政策による診療報酬引き下げ の影響 平成18年の医療制度改革法案(小泉改革・ 聖域なき構造改革)により医療費は1.1兆円 (5年間毎年2200億円)の削減となった。 2.平成16年から導入された新医師臨床研修 制度による医師の偏在と医局制度の崩壊
1.医療費抑制政策による診療報酬の 引き下げの影響 ○急性期病院では 平均在院日数削減 長期入院の抑制 高齢者は3ヶ月以上入院させない 赤字経営の救急医療からの撤退 収益の悪い小児科の閉鎖 訴訟の多い産科の廃止 など 外来では自己負担が増加
1.医療費抑制政策による診療報酬の 引き下げの影響 ○療養病院 療養病床入院の多くは社会的入院として 入院料の大幅削減 療養病床数も大幅削減計画 急性期病院からの転院受け入れも難しく なっている ○介護施設 介護型療養病床の廃止 なども予定 しばらく延期となったが。
2.新医師臨床研修制度による医師の 偏在と医局制度の崩壊平成16年 それまでは医師国家試験に受かれば多くは出身大学の内科・外科などの希望する医局に入局し医師として、その医局で一人前になるまでほぼ無給で修行するシステムでした。 ところがこの制度は医局の教授の権限が巨大化し、医局員の自由がなく研修医にとっては専門科の研修しか受けられないとの不満もありました。
医局制度 医局とは教授を筆頭に助(准)教授、講師、助手、無給医局員というピラミッド型の徒弟制度で、医局員は教授の言うことには逆らえないほど教授の権限は強いものでした。 しかし地方の公立病院や民間病院などは、地元の大学から医師の派遣や応援をしてもらわないと維持できず、特にへき地の公立病院などは医局制度のおかげで医師の補充が可能でした。
新医師研修制度は、国家試験合格後自分で研修病院を自由に選択でき、2年間の研修期間中は研修医(医師ではあるが保険診療できない医師)にも給与が支給されるため、地方では出身大学の医局入局がどんどん減り大都会の有名病院に希望が偏ってきました。新医師研修制度は、国家試験合格後自分で研修病院を自由に選択でき、2年間の研修期間中は研修医(医師ではあるが保険診療できない医師)にも給与が支給されるため、地方では出身大学の医局入局がどんどん減り大都会の有名病院に希望が偏ってきました。 最近では中国地方の大学病院には100人の卒業生のうち20-30人しか研修希望がない状態です。特に山口大・島根大・鳥取大学では危機となっています。
慌てた地方自治体は、地元で卒後研修することを条件に、入学試験で地元枠や推薦枠を作ったりしていますが、医師の養成は10年以上かかりますので当分県内の医師不足の解消は出来ないだろうと思います。慌てた地方自治体は、地元で卒後研修することを条件に、入学試験で地元枠や推薦枠を作ったりしていますが、医師の養成は10年以上かかりますので当分県内の医師不足の解消は出来ないだろうと思います。 むしろ制度そのものの見直しが必要です。 地方の医師不足の原因はこの研修制度ですが、産婦人科医・小児科医・麻酔科医などの不足も深刻ですし、訴訟の関係で今後は外科系医師も少なくなりそうです。
本当に医師数は少ないのでしょうか 日本の医師数は減っているのではなく むしろ毎年増えています。 年間医師国家試験合格数 約7700人
大学病院の臨床研修医数の変化 大学病院に医師が残らなくなった 最近では30%台になり、また地域差が大きいようです
新医師研修制度後、医師派遣の中止や休止 があったか、その原因は研修制度が主に 原因か 日医アンケート調査 派遣の中止あり 新医師研修制度が原因
岩国市の 地域医療・救急医療の現状 崩壊させないために 岩国市の現状
○岩国消防隊の救急実績 年度別救急搬送件数 この数年は年間約7000件前後で推移しています。
年度別搬送数と高齢者数 救急車搬送の 60%は高齢者 です。 救急搬送の種別 急病搬送も60%程度
岩国市救急隊 平成22年度地域別出動回数
岩国消防救急隊 施設別 救急搬送数 総搬送数 6,702人 平成21年度 施設別 搬送数 国病には柳井・大竹消防からも537人搬送 計4571人 国病・医師会病院以外の一般病院にも1300件の救急搬送有ります
岩国消防救急隊 重症度別 救急搬送数 総搬送数 6,702人 平成21年度 重症度別 約35%が 軽症の 搬送
岩国市の地域医療・救急医療の現状 ○国病(国立病院岩国医療センター) 医師・看護師不足は深刻で、岡山大からの医師派遣の減少で、各科の医師が増えず、特に夜間・時間外の小児救急は軽症受診・コンビニ受診が多く小児科医師の疲弊が顕著です。 内科救急も医師の減少、精神科は入院廃 止、産科も危機的な状態と言われています。眼科も専門医が減り手術が出来なくなっています。新病院に向けて立て直しが必要です。
国立病院岩国医療センター(国病) 重症度別 救命救急センター受診者数 平成21年度年間受診者総数20,039人 約60%が軽症受診者なのです
国病の救急救命センター 当直体制 1.救急外来当直医 内科 2.救急外来当直医 外科系 3.病棟当直医 外科系 4.ICU当直医 麻酔科・心臓外科 5.病棟ICU・CCU当直 循環器医師 6.NICU 小児科 7.産科当直 内科とは別に心臓病の救急体制があり、これが一緒になれないか検討も必要。 国病からのお願い ・現在、当直に従事する内科医は9名。 ・内科当直は月に4回程度あり、 翌日もほとんどが通常勤務です。 ・当直業務は日常診療を圧迫し、 かなりのストレスとなっています。 ・次年度は2名の減員で医局からの 補充なし。 救急医療(内科部門)は崩壊の一途です。 ・市民・行政・他の医療機関が現状を理解し、早急に対策を講じないと「来春以降は内科救急体制が維持できない可能性」があります。
国病内科当直からのお願い 救急医療対策協議会での提言 他の医療機関の方々へ ・「何かあったら国病へ」を控えて下さい。 ・軽症は可能な取り自院で対応下さい。 ・嘱託や関連する老健施設・老人ホームで延命処置 の希望のない方が急変された際は、可能な限り自 院で解決するようにして下さい。 介護施設からの要介護高齢者の救急搬送が増えて その対応に苦慮している。特に治療後に紹介先の介護施設に受け入れが出来ないことも問題です。
国病の内科救急の現状から、 介護施設からの重度の要介護者の救急搬送を控えて欲しい、 とくに積極的な治療を望まない場合は介護施設での治療や看取りが望まれています。 果たして可能なのでしょうか。 岩国市の救急の話題から少し話がずれますがご容赦ください。
意識障害・栄養失調・末期症状で老衰に近いような状態で、家族もその施設で任せますと了解されている場合でも、急変したり、死亡時に医師が不在で、また看護師もいないのでは、よほど施設・医師・家族の連携がとれた入所者の看取り以外には施設で対応することは難しいのではないでしょうか。意識障害・栄養失調・末期症状で老衰に近いような状態で、家族もその施設で任せますと了解されている場合でも、急変したり、死亡時に医師が不在で、また看護師もいないのでは、よほど施設・医師・家族の連携がとれた入所者の看取り以外には施設で対応することは難しいのではないでしょうか。 国病の要求も解りますが今の国の医療や介護制度では、岩国市では国病や医師会病院に紹介するしか無いのが現状なのです。 その理由を考えてみます。
老人保健施設以外の介護施設は、医療を行う施設ではないため医師の常駐は定められていません。老人保健施設以外の介護施設は、医療を行う施設ではないため医師の常駐は定められていません。 医師がいないため、急変時や死亡時の対応がとりにくい事、嘱託医も夜間休日の対応はできないことも多く緊急の際の治療や処置・検査が出来ません。 介護施設基準では看護師の人員配置も少なく何時も看護師がいるわけではありません。また末期医療を行っても診療報酬制度などは全く考慮されていませんでした。 これらの施設では最後を看取ることが難しくなり、多くは病状の急変・悪化や末期でも他の急性病院や併設された病院に転送と言うことになっています。
看護師がいない時間がある これらの施設の職員の認可定数の基準をみれば、その数を知るだけで、この人数では夜間など急変時や亡くなるときに、介護施設内で対応は困難です。 --------------------------------------- 100床病棟の場合 医師 看護職員 看護補助 看護職員計 医療療養病棟3202040人 重度の症例 325 25 50人 介護療養病棟317 17 34人 ---------------------------------------- 医師 看護職員 介護補助 介護職員計 老人保健施設19 2534人 介護福祉施設(1)3 3134人 ----------------------------------------
家族側の要因として、 介護施設入所者も、病態の急変や悪化時には、 家族の希望の多くは「出来るだけの治療を希望する」との要望が多く、介護施設では医療・治療は出来ないため多くは緊急搬送されることとなります。 比較的安定した方の病態の急変時には施設での対応は難しいと思いますが、老衰に近い状態でも施設で静に看取る(何もせずに見守る)ことは出来にくいのが現実です。 家族の認識も変えなければ今後も施設入所者の大半の死亡場所は病院と言うことになるでしょう。
死亡場所別の検討 介護施設は終の棲家に なれるのか
日本人の死亡場所別構成割合 22年度 病院・診療所の死亡が80%、自宅は12.6% 老人保健施設・老人ホームは極端に少ない
死亡場所の日米比較 日本:厚生労働省大臣官房統計情報部-平成13年人口動態統計
病院・診療所 介護施設 自宅 その他 病院・診療所 介護施設 自宅 その他 死亡場所が介護施設なのは日本ではたった2.4%. 一方スエーデンでは31.0%,オランダで32.5%,フランス10.8%など日本に比べ施設での死亡の数が多い
欧米に比べて日本では病院死が多く、自宅死が少ないとの認識は少し改める必要があります。欧米のようにナーシングホームや介護施設で看取る事が出来るようになれば病院死の割合は減ります。また日本の統計では療養病床を一般病棟にカウントしていることも数字のトリックです。欧米に比べて日本では病院死が多く、自宅死が少ないとの認識は少し改める必要があります。欧米のようにナーシングホームや介護施設で看取る事が出来るようになれば病院死の割合は減ります。また日本の統計では療養病床を一般病棟にカウントしていることも数字のトリックです。 介護病棟や介護施設での静かな看取りができ、施設が終の棲家になるためには、施設の人員・制度。診療報酬。家族の理解・了解・納得など色々クリアしなければならないハードルがあります。
と言うことは、 今のままでは介護施設は 「終の棲家になり得ない」のです そして寝たきりであろうが植物状態であろうが重度の要介護者が、急変や末期にはまた救急病院に転院して濃厚医療が行われることになり、また最後には延命のための医療が行われることもあり、国民医療費が増える事になるのです。 国民全体で考える必要があります。
話を 岩国市の救急医療に 戻します。 国病以外の 救急医療の 現状。
○医師会病院の現状 医師会病院は2次救急の地域支援病院で すが山口大からの派遣医が減り、当直業 務が過酷になっています、また看護師不足 が深刻で空床があっても入院制限をしなく てはならない時もあります。 ○市内の中小病院 大学からの当直や休日の医師派遣が減り、 常勤医・特に高齢院長の負担が増え、夜 間や救急医療が行えなくなっています。 地域の救急医療の崩壊の危機です。
○医師会病院 救急センター実績 平日 午後7時から午後11時まで、休祭日は全日。 岩国市医師会員(一部玖珂郡医師会の応援)が交代で 出務しています。内科系2名・外科系1名 平成21年度救急センター受診者数 11,929人 医師会病院の救急センターには 未だ余裕はあります!!
岩国市の救急医療 救急告示病院数の推移 15年前 現在 国立岩国病院 国病 岩国市医師会病院 医師会病院 岩国病院 岩国病院 岩国みなみ病院 錦病院 岩国中央外科病院 藤政病院 玖珂中央病院 市立錦中央病院 市立美和病院
全国・山口県でも救急告示病院の減少 8件減少 421件減少 全国的にも。山口県でも救急告示病院の減少が進んでいる。県内の減少の多くは岩国市の病院か。
年次別救急医療体制 山口県の救急医療体制 全国救急医療体制 青・初期救急 赤・第二次救急病院 (入院を要する救急医療体制) 緑・第三次救急病院(救急救命センター) 医療施設動態調査より
なぜ岩国市には救急告示病院が 減ったのでしょうか 民間の中小病院の救急告示病院には行政や診療報酬での救急医療の補助はなく、その病院の医師や看護師のボランティア精神に委ねているような政策ですから、夜間の救急医療などに対応していると、当直医は当然夜勤明けの休みなどとれませんので医師・看護師の疲労は増し、翌日の診療に支障がでます。
それに加えて「夜間救急を行った民間の病院は、病棟の看護師が手伝ったので、その日の夜勤の看護師数が定数を満たさない」と厚生局からクレームを付けられ、「病院の看護師定数不足」として指導されたり、中には入院費の返還を求められたため、救急医療に協力することが、自院の崩壊になると判断して圏内の救急告示民間病院はほとんどが撤退したのが現実です。それに加えて「夜間救急を行った民間の病院は、病棟の看護師が手伝ったので、その日の夜勤の看護師数が定数を満たさない」と厚生局からクレームを付けられ、「病院の看護師定数不足」として指導されたり、中には入院費の返還を求められたため、救急医療に協力することが、自院の崩壊になると判断して圏内の救急告示民間病院はほとんどが撤退したのが現実です。 決して岩国市の民間病院が救急医療に応援しないのではないことを理解して下さい。 昼間は多くの救急患者を受け入れていますし、夜間にも出来るだけの診察はしています。
一方。診療所では夜間や時間外に なぜ診療してくれないのでしょうか 昔は、夜間に病気が悪化したり突然の急病には、かかりつけ医に連絡すれば多くの医師が往診してくれたり、連れてゆけば診療してくれていたと思います。 なぜ最近は診療所のかかりつけ医が診てくれないのでしょうか。 こんな質問も受けます。
かかりつけの患者さんには携帯の連絡先などを知らせて対応してくれる診療所は多いと思いますが、一番の問題は医薬分業の推進により診療所に薬がない事です。かかりつけの患者さんには携帯の連絡先などを知らせて対応してくれる診療所は多いと思いますが、一番の問題は医薬分業の推進により診療所に薬がない事です。 最近お薬の処方は診察を受けた診療所でなく、処方箋をもらって近くの調剤薬局で処方される「院外処方の診療所」が増えています。10年くらい前から、国の方針で医師を儲けさせないために調剤薬局という院外薬局を推奨し、診療所には薬を置かないようになりました。
診察しても薬が出せない。 診療所に薬がないので、休日や夜間に診療しても投薬ができず、また夜間はその診療所の調剤薬局も開いていないため結局診察しても診るだけしかできないので夜間診療をしなくなりました。そのため開業医は夜間に診療している急患センターや休日当番医として交代で出務するようになりました。 院外処方の見直し 院外処方は薬剤師による薬の管理が出来、同じような薬がいろんな病院や診療所から処方されていれば整理できる利点もありますが、逆に医療費は高くなり患者負担も増えるので最近は見直しも行われています。 しかし一端変更したら元に戻すのは大変です。
岩国市救急医療対策協議会 22年7月発足 行政・医師会・国病・医師会病院・救急隊の専門部会で協議を行っています。 協議議題 岩国市の救急医療を崩壊させないために ○岩国市の1次・2次・3次救急の棲み分け 夜間休日の急患は国病への軽症患者受診を減らし、 軽症者は医師会病院の救急センターへ受診するよう 市民の方に啓発する。 ○救急医療制度の説明講演会 ○国病は高度救命センターとして救急救命を。 ○不要不急の救急車利用しないよう啓発 ○国病で選定療養費徴収
「選定療養費」とは 差額ベット、予約診療、大病院の初診、時間外診療、など保険診療以外の実費を自己負担徴収できる制度です。 200床以上の病院に紹介状なしで受診した場合や夜間休日に受診された場合に、患者があえて大病院を選択したということで、個室代などと同じぜいたく療養費を個人負担してもらう制度です。大病院への軽症者の受診を減らす意味もあります。
国病では時間外・夜間の救急外来には 受診の都度「選定療養費」がかかります。 夜間・時間外の軽症受診を減らすため多くの大病院でこの制度を取り込んでおり、 国病でも4月から1回5,250円算定されます。入院が必要な方や交通事故などは算定されませんが、小児からも算定されます。ご理解下さい。 医師会病院の急患センターでは時間外の選定選定費は算定されませんので軽症はまず医師会病院を受診して下さい。
国病の救急救命センター受診者数 各年4-7月 国病の時間外・休日受診者数は23年度から減少しており、少し啓蒙効果が表れたのか。 但し医師会病院の受診者数は23年度も変化無いので。 医師会病院救急センター受診者数
「救急医療情報キット」 550万円の予算で岩国市が4月から導入 65歳以上の独居老人5500人対象 名前・持病・服用薬・受診病院・緊急連絡先など 紙情報を本人が記載しプラスチックの専用ボトルに入れで冷蔵庫に保管するシステムです。 本人の記載では正確性や医療情報量に乏しく、平均年齢80歳を超える高齢者が個人で記入することには限界もあり、必要な情報は医師が関わらないと現場では利用できないと思われます。 医師会や救急隊など現場に相談なく進められていました。