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無機化学 I 5章 ① 共有結合 ( covalen t bond ), 共有結合結晶 と カルコゲン、窒素、リン、ヒ素、炭素、ケイ素、ボロン などの非金属元素 復習と目標 1)共有結合の典型である水素分子の分子軌道とそのエネルギーを、電子間クーロン反発相互作用を無視した 1 電子問題として解く。 これらの計算を厳密に解くのは非常に困難であり , 解法の流れと得られる図を重視して説明する。 共有結合で重要な 混成 を説明する。.
E N D
無機化学 I 5章 ① 共有結合(covalent bond), 共有結合結晶 とカルコゲン、窒素、リン、ヒ素、炭素、ケイ素、ボロンなどの非金属元素 復習と目標 1)共有結合の典型である水素分子の分子軌道とそのエネルギーを、電子間クーロン反発相互作用を無視した1電子問題として解く。 これらの計算を厳密に解くのは非常に困難であり,解法の流れと得られる図を重視して説明する。 共有結合で重要な混成を説明する。
2) 純粋な共有結合結晶は、ダイアモンド(diamond)構造をもつ14(旧Ⅳ)族元素(C, Si, Ge, Sn)の結晶のみである。Ⅱ族とⅥ(現16)族の化合物結晶(Ⅱ-Ⅵ化合物)、Ⅲ族とⅤ(現15)族のⅢ-Ⅴ化合物は、2種元素の電気引性度が違うことにより、共有結合にイオン結合が加わる。 3)非金属元素のうち カルコゲン(O, S)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、炭素(C)、ケイ素(Si)、ボロン(B)を紹介する
双極子能率(dipole moment)の方向の訂正 マイナスからプラスへのベクトル 極性分子:正電荷の中心と負電荷の中心が一致しない分子。双極子能率(dipole moment)を持つ HCl, H2O Od- = Cd+ = Od- Hd+-Cld- 双極子能率アリ 双極子能率ナシ IUPACの定義も調べてみました。 http://goldbook.iupac.org/E01929.html やはり、ダイポールモーメントはマイナスからプラスへの矢印になるようです。
5.1) 水素分子と共有結合 5.1.1) 分子軌道(molecular orbital)の波動関数(wave function) ●2つの水素原子H・(HA, HBとし、プロトンをa, bとし、それらの間の距離をRとする)が1個ずつ電子(1,2とする)を出し合い、それを共有して結合をつくり水素分子ができる(図5.1)。 ●電子1がHAに、電子2がHBに配置されたHA(1)••HB(2)と、その逆のHA(2)••HB(1)の2つの中性の状態の他に、電子が一方から他方に移ったHA+••HB(1,2)とHA(1,2)••HB+のイオン性の状態が考えられる。しかし、後者2つのイオン性の状態は等しい頻度で現れるので電荷が静的に偏在することはなく、イオン結合性はない。 図5.1H2+の陽子a, bと電子1 1 ● rb1 ra1 a b R
●2つの近似法(分子軌道法、原子価結合法)で電子軌道、そのエネルギーが求められるが、ここでは分子軌道法を用いる。幾つかの仮定により近似を行う。●2つの近似法(分子軌道法、原子価結合法)で電子軌道、そのエネルギーが求められるが、ここでは分子軌道法を用いる。幾つかの仮定により近似を行う。 1. 電子は分子軌道に入る。 2.位置の定まらない2電子間に働くク-ロン斥力を考慮するのは非常に面倒なので、無視する。すると、電子1は、プロトンaおよびbからのクーロン引力ポテンシャル{(e2/40)[(1/ra1)+(1/rb1)]}のみを受け、H2+(図5.1)の電子状態となり、1電子問題としてシュレディンガー方程式を解くことができる。ここでra1, rb1は電子1とプロトンa, bの距離である。電子2についても同じである。
3. 分子軌道の波動関数を, 水素原子A、Bの原子軌道波動関数a、bの線形結合で近似する(原子軌道の線形結合 linear combination of atomic orbital LCAO, 5.1式) = caa+ cbb(5.1) (ca2: 電子がaに見出される確率、cb2: 電子がbに見出される確率) 今考えているaとbは、ともに同じ電子状態の波動関数(ここでは1s軌道)であるから、確率ca2とcb2は等しく、5.2式が成立する。 ca=cb(5.2) 従って、5.1式は 1= ca(a + b) (5.3) 2= ca(a b) (5.4) 5.3式、5.4式の係数は、規格化条件(空間の微小体積をdとして) (5.5)
より求まり、 (5.6) (5.7) である。前者は対称分子軌道、後者は反対称分子軌道である。Sは重なり積分で、原子軌道aとbの重なりを示し、aに属す電子がbに沁み込む確率振幅である。 (5.8) 水素の1s軌道関数(=(a03)1/2 exp (r/a0)、a0 = h2/42me2 = 0.529108 cm)と重なり積分S = exp (R/a0)[1 + R/a0 + (R/a0)2/3]、プロトン間の距離R = 1.06 Åを用いて1(5.6式)と電子の存在確率1*1 = |1|2を図5.2aに、また、2(5.7式)の場合を図5.2bに示す。
図5.2. a) H2+の対称分子軌道1と電子密度|1|2、b) H2+の非対称分子軌道2と電子密度|2|2
結論:1では2つのプロトン間の電子密度は大きく、電子はかなりの時間にわたって2つのプロトンから同時に引力をうけるので結合エネルギーが増加し(結合軌道, bonding orbital)、電子エネルギーは安定化する。一方、2では2つのプロトン間の中点で電子密度はゼロであり、2つのプロトンの外側にはじき出され、電子密度は分子軌道を作る前より減少し(反結合軌道, antibonding orbital)、電子エネルギーは不安定化する。
5.1.2) 分子軌道エネルギー 結合軌道1、反結合軌道2のエネルギー1, 2は波動関数5.6式、5.7式を、シュレディンガー方程式H = Eに入れて解けば得られる。ここでのHは5.9式であるが、実際の計算をしなくとも、5.10-5.13式のような関数を用いるとエネルギー準位の状況が簡単に理解できる。 (5.9) ここで、以下の様にaおよびbの軌道エネルギーを(5.10) また、軌道間相互作用エネルギーHabを5.11式とする (5.11)
1, 2はHaa, Hab, Sを用いて、5.12式、5.13式となる。 (5.13) (5.12) Haaは、プロトンaとプロトンbがRの距離にあるときの、プロトンaの1s軌道に存在する電子のエネルギーである。この軌道は、図5.1の様に広がっており、また水素原子の電子にさらに正電荷が近づいたものであるから、孤立した水素原子1s軌道エネルギー1sより少し低い(図5.3)。 1s ● rb1 ra1 Haa a b R 図5.1 図5.3
Habはaの電子がbの軌道に飛び移る確率を示し、aとbが接近して、aとbとの重なりSが大きくなるほど大きな値となる。Habはaの電子がbの軌道に飛び移る確率を示し、aとbが接近して、aとbとの重なりSが大きくなるほど大きな値となる。 1,2は水素分子イオンの1個の電子軌道であるが、粗い近似とし、電子が2個ある水素分子においても、2個の電子は水素分子イオンの分子軌道にあるものと考える。図7.3は2個の水素原子の電子(エネルギー1s)が分子軌道を形成して1, 2に分裂し、2個の電子が結合軌道に入り水素分子を形成する様子を示す。 1s 2 1 Haa • 図5.4 1s: 孤立水素原子の軌道エネルギー • Haa:水素分子陽イオンH2+のエネルギー1:水素分子結合軌道のエネルギー • 2:水素分子反結合軌道のエネルギー
概略 2つの軌道の相互作用で、新たに結合軌道と反結合軌道が形成される概略 2つの軌道の相互作用で、新たに結合軌道と反結合軌道が形成される 反結合軌道 結合軌道
5.2) 混成と共有結合 5.2.1) 混成(hybridization) ●炭素原子は2s22p2の最外殻電子配置をもち、このままでは2個のp軌道電子のみが結合に関与した水素との化合物H-C-Hを与えると予想されるが、実際はメタンを始めとする飽和炭化水素CnH2n+2、エチレンやアセチレンのような2重結合や3重結合を持つ不飽和炭化水素を与える。これは、図5.6に示す混成軌道を用いて説明された(ポーリング, スレーター)。 2p 2s 1s 図5.5 炭素原子(C)の軌道エネルギー
●1個の2s軌道電子が2pに励起され、あたかも同一のエネルギー軌道(混成軌道)に4個の電子(2s12px12py12pz1)があり、飽和炭化水素やダイヤモンドに見られる4本の結合を持つ化合物(sp3混成という、結合角は10928')、3個の電子が他の3種の元素と結合するとエチレンのような3本の結合を持つ化合物(sp2混成という)、2個の電子が他の2種の元素と結合すると2本の結合を持つアセチレンのような化合物(sp混成という)を与える。●1個の2s軌道電子が2pに励起され、あたかも同一のエネルギー軌道(混成軌道)に4個の電子(2s12px12py12pz1)があり、飽和炭化水素やダイヤモンドに見られる4本の結合を持つ化合物(sp3混成という、結合角は10928')、3個の電子が他の3種の元素と結合するとエチレンのような3本の結合を持つ化合物(sp2混成という)、2個の電子が他の2種の元素と結合すると2本の結合を持つアセチレンのような化合物(sp混成という)を与える。 sp3混成 py pz px s 2p 混成軌道 2s sp2混成 1s 1s sp混成 図5.6炭素の1s22s22p2電子配置とsp(青), sp2(赤), sp3(緑)混成軌道
炭素以外でも価数と結合の方向性から、表5.1、図5.7のような混成軌道が得られている。炭素以外でも価数と結合の方向性から、表5.1、図5.7のような混成軌道が得られている。 表5.1 混成の例
図5.7 混成軌道 BeF2(sp), BF3(sp2), メタン(sp3), NH3, H2O 非共有電子対 BeF2(sp) NH3(sp3) H2O(sp3) BF3(sp2) CH4(sp3)
図5.7-2 混成軌道 PCl5(sp3d), SF4, I3―, SF6(sp3d2) SF4(sp3d) I3(sp3d) PCl5(sp3d) SF6(sp3d2)
A)sp3混成 s軌道とp軌道の寄与が1:3である分子軌道の形を考える。軌道の混成を各軌道の線形結合で表し、4つの独立な(互いに直交している)規格化された分子軌道を作り、分子軌道への各p軌道の寄与が同等として、そのうちの1つの軌道の向くベクトルをxyz面内の第一象限にすると、分子軌道は5.14式~5.17式である。 1 = (1/2)(s + px + py + pz) (5.14) 2 = (1/2)(s – px – py + pz) (5.15) 3 = (1/2)(s + px – py – pz) (5.16) 4 = (1/2)(s – px + py – pz) (5.17) sp3混成を正四面体混成(tetrahedral hybrid)ともいう(図5.8、各軌道の成す角は10928')。 図5.8sp3 混成軌道
B) sp2混成 s軌道とp軌道の寄与が1:2の分子軌道で、寄与するp軌道をpx, pyとする。3つの同等で独立な混成軌道は、エチレンやベンゼンのように平面状で、各々が互いに120の角を成すものを考える。4はpz軌道そのものである。1をx軸方向の5.18式と定め、2および3軌道の中のpx, pyの係数を規格化と直交の条件より得る。 1 = s/3 + 2px/6 (5.18) 2 = s/3 – px/6 + py/2 (5.19) 3 = s/3 – px/6 – py/2 (5.20) sp2混成軌道は3方混成(trigonal hybrid)といわれ、各軌道は互いに120を成す(図5.9)。残りの4 = pzは、1~3が作る平面(xy面)に垂直に延びている。 図5.9sp2混成軌道(7.18~7.20式) 2 1 3 2 1 3
C)sp混成 p軌道としてpx軌道を選ぶと、5.21~5.24の4つ分子軌道が得られ、1と2はxの正、および負の方向に延び、2方混成(diagonal hybrid)をなし、残りの2つの軌道はy、z軸方向に延びる(図5.10)。 1 = (1/2) (s + px) (5.21) 2 = (1/2) (s – px) (5.22) 3 = py (5.23) 4 = pz(5.24) 図5.10sp混成軌道(5.21,5.22式) 1 2
5.3)共有結合半径 共有結合A-Bの結合距離は、A-A, B-B結合距離の算術平均で近似される(例、C-C(1.54 Å)、Si-Si(2.34 Å)の算術平均1.94 Å 実測C-Si距離1.930.03 Å)。従って、A-A, B-B結合距離の1/2がそれぞれAおよびBの共有結合半径となる。 表5.2 ポーリング(上段)メーラー(下段)の共有結合半径(Å)
O Q P L 5章 共有結合 ② 5.4) 結晶 5.4.1)14族 C, Si, Ge, Sn, Pb : C, Siが非金属元素に分類されるが、Ge、aSnは半導体(金属でない) ●C(carbon, 地殻濃度480ppm)より成るダイヤモンドは典型的なsp3共有結合結晶であり、巨大分子とも言える。結晶構造は閃亜鉛鉱型(CuCl型)で2種の元素を炭素にしたもの。充填率は0.340であり、高価な割に隙間だらけの物質である。
●重要な課題ダイヤモンドの大量・大型サイズ結晶の人工合成と、ダイヤモンドに導電性を付与できる手法の開発、新たな半導体素子●重要な課題ダイヤモンドの大量・大型サイズ結晶の人工合成と、ダイヤモンドに導電性を付与できる手法の開発、新たな半導体素子 ●黒鉛、グラフェン、フラーレン、ナノチューブはp電子を含む炭素化合物である。 C60 C70 黒鉛 フラーレン ナノチューブ C60-C60
●Si(silicon,半導体・太陽電池の原材料、濃暗灰色結晶、地殻濃度277100ppm)。SiO2(二酸化ケイ素、シリカ、石英)として地殻に存在, 還元(電気的に)して99.999999999%(11N)とし半導体の基板に使用する。バンドギャップが常温付近で利用するために適当な大きさであること、BやPなどの不純物を微量添加させることにより、p型半導体、n型半導体のいずれにもなることなどから、電子工学上重要な元素である。半導体部品として利用するためには高純度である必要があり、このため精製技術が盛んに研究されてきた。現在、ケイ素は15Nまで純度を高められる。 ●重要課題:SiO2→高純度Siの安価な精製技術 シリカ シリコン単結晶
14族、15族、16族の金属:Ge, Sn, Pb, Bi, Po ●Ge(germanium, 灰白色結晶、1.8ppm)はダイヤモンド構造の元素。初期のトランジスタに使われ、安定性に優れるケイ素(シリコン)が登場するまでは主流だった。石英を用いたレンズに添加すると屈折率が上がり、また赤外線を透過するようになるので、光学用途にも多用される。 ●Sn(tin, 地殻濃度2.2ppm)はスズ(灰色スズ)⇌スズ(白色スズ)⇌スズの3種の同素体があり、普通の金属スズはbで13.2℃でaに極めてゆっくり転移。金属スズを曲げると独特の音がするが、これはスズ鳴き (tin cry) と呼ばれる。結晶構造が変化することにより起こる。同様の現象は、ニオブやインジウムでもある。 スズはダイヤモンド構造の非金属で、Sn-Snの結合エネルギーは小さく、脆い。b→aの転移速度は30℃以下で急速に進み、腫物状に膨張しボロボロになる(スズペストとナポレオンのロシア遠征の敗退)。
●四塩化スズ(SnCl4爆発性、水との反応でHCl発生)は常温で発煙性の液体(融点33.3℃)でありSn4+と塩素原子との結合はイオン的でなく共有結合。●四塩化スズ(SnCl4爆発性、水との反応でHCl発生)は常温で発煙性の液体(融点33.3℃)でありSn4+と塩素原子との結合はイオン的でなく共有結合。 ●銅との合金:青銅(ブロンズ)、鉛との合金は半田として利用、鉄板にメッキするとブリキ ●重要課題 毒性のない(鉛フリー)はんだの開発 ITO(indium tin oxide): 酸化インジウムと酸化スズの混合物で、透明な電導膜であり、液晶、有機ELの透明電極材料である。インジウム(地殻濃度0.049ppm)は中国のレアメタル戦略物質。 ●重要課題Inを含まない透明電極の開発
●Pb(lead, 地殻濃度14ppm)は金属、共有結合性はない。軟らかい金属で紙などに擦り付けると文字が書けるため、古代ローマ人は羊皮紙に鉛で線および文字を書き、これが鉛筆(lead pencil) の名称の起源。 鉛蓄電池(自動車バッテリー)、放射線遮蔽材、 毒性:テトラエチル鉛(アンチノック剤)のような脂溶性の有機物質は細胞膜を通過して直接取り込まれるため、非常に危険である→ローマの滅亡。
表5.3 解離熱(kJ mol1)、単結合の結合エネルギー(kJ mol1) *: Au-S結合は金の表面にチオール基の付いた分子を反応させて合成されるSAMs(自己組織化膜, 4章囲み6参照)に見られる。10 kJ/molの桁は実験より推定されたもの(H. Skulasonet al., J. Am. Chem. Soc., 122、9750(2000)), 他に40 kJ/mol(計算: K. M. Beardmore et al., Chem. Phys. Lett. 286, 40(1998), 120 kJ/mol, 実験: R. G. Nuzzoet al., J. Am. Chem. Soc., 109, 733-740(1987))、209 kJ/molの報告もある。
表5.4 ダイヤモンド構造の炭素、ケイ素、Ge、Snの諸性質表5.4 ダイヤモンド構造の炭素、ケイ素、Ge、Snの諸性質
半導体(semiconductor), 絶縁体(insulator) 2 • 伝導帯 • ギャップ • eg • 価電子帯 1 • 結晶 • 2原子(分子) • 4原子(分子) • 1原子(分子)
宝石ダイヤモンド ●大部分のダイヤモンドは有色であり、特に黄色(窒素が入ることによる)のものが多い。色がごく薄いもの(約10 %)が宝石となる。ただし、有色ダイヤモンドのうち青色や桃色の石は珍しく高価である。 スミソニアン博物館にあるホープのダイヤモンドはブルーダイヤモンド(結晶としてⅡ型B: 天然のダイヤモンドでは百万個に1個の割合)で、半導体の性質がある。青色は炭素にホウ素が入ることによる。 ●ブリリアンカットは58面カットをいう(屈折率2.4のダイヤモンドをもっとも美しく見せるための設計なので他の石には通用しない:合成ルチル、チタン酸 • ストロンチウム、ジルコニアなど屈折率 • がダイヤモンドに近いものは、ブリリア • ンカットで美しい輝きを示す) ジルコニア
宝石ダイヤモンド ●モアッサンはフッ素の単離、電気炉の開発で1906年ノーベル化学賞を得た。他に、黄色のダイヤモンドの脱色やダイヤモンドの合成研究を行った。それは、熔融鉄に多量の炭素を溶かし込み急冷する方法で、ダイヤモンドの合成に成功したとされたが、その成功は助手の偽造による。ゼネラル電気の合成ダイヤモンドは、熔融したニッケルを溶媒に用いており、発想は類似である。 ●産地はロシア、ボツワナ、コンゴ、オーストラリア、南ア、カナダで全産出量15600万カラットの90%である(2004年)。人工ダイヤは1億カラット以上生産されている。
ダイヤモンドの導電性 SF小説「アンドロメダ病原体」、「ジュラシック パーク」で著名な作家マイケル クライトンの作品に「コンゴ」がある。 コンゴの鉱山で青色のⅡ型Bダイヤモンドが発見される。ボロンを含む青色ダイヤモンドは102cmの桁の半導体で、光を通し、融点が極めて高いことから、超高密度にトランジスターを搭載しても、発生する熱で融解することがない超LSIの基板として、シリコンに置き換わるものと判断した米国の半導体開発会社が、探索隊を派遣する所が序となる。 小説の中では、それまでに行われたダイヤモンドへのホウ素のドーピングは(p型ダイヤモンド)全て不成功であったと記してあるが、最近ドーピングが成功し、得られたダイヤモンドが超伝導を示すと報告された。次は、n型ダイヤモンドの開発が必要である。
ジョン・マイケル・クライトン(John Michael Crichton、1942年10月23日 - 2008年11月4日) アンドロメダ病原体 失われた黄金都市 ジュラシック・パーク
5.4.2) 共有結合+イオン結合 原子の電気陰性度(electronegativity)の違いにより、異種原子より成る共有結合結晶には何らかのイオン性が混入する。電気陰性度は、ポーリングおよびマリケンにより定義された2種がある。 ポーリングの電気陰性度:結合A-Bの解離エネルギー(eV単位)をD(A-B)とすると、結合A-B中のイオン構造A+Bの寄与は5.25式である。ポーリングはΔABの平方根を結合A、B原子の電気陰性度の差とし、この関係が多くの結合で満足するように各原子の電気陰性度の値xを決めた(表5.5)。金属の仕事関数 と5.27式で関係するとされたが、きわめて粗い近似である。 ΔAB=(5.25) (5.26) = 2.27x + 0.34 eV (5.27)
表5.5 ポーリングによる原子の電気陰性度 色をつけた原子は、水素より電気陰性度の高いもので、水素結合を形成する。 マリケンの電気陰性度:各原子のイオン化ポテンシャルと電子親和力との和を電気陰性度とした。(5.28)
5.5 Ⅱ-Ⅵ、Ⅲ-Ⅴ化合物 ●Ⅱ-Ⅵ化合物、Ⅲ-Ⅴ化合物はイオン性と共有結合性の両者を持つ。 ●Ⅱ-Ⅵ化合物の例としてZn-Sを考える。Zn(4s2)とS(3s23p4)のイオン結合ではZn2+(3s23p63d10)S2-(3s23p6)の電子配置であり、共有結合ではsp3結合を考えZn2-(4s4p3)S2+(3s3p3)である。ポーリングの電気陰性度を用いイオン性を計算すると17~18%のイオン性が予測される。一方、誘電性結晶の結合のイオン性度が半経験的理論により得られ、その値は62%である(表5.6)。 閃亜鉛鉱:蛍光体 ●II-VI化合物のCd-Teは薄膜太陽電池、巨大磁気抵抗(GMR:強磁性体と金属を交互に張り合わせたデバイスで、強磁性体の揃ったスピンと同一方向に金属内に電流が流れるときは電気抵抗が小さく、反対方向に流れるときは大きな電気抵抗となることを利用している)に利用される。
●Ⅲ-Ⅴ化合物の例としてIn-Sbを考える。In(5s25p)とSb(5s25p3)のイオン結合では、In3+とSb3–(5s25p6)の電子配置であり、共有結合ではsp3結合を考えIn(5s5p3)とSb+(5s5p3)である。ポーリングの電気陰性度を用いイオン性を計算すると1~3%のイオン性が予測される。表5.6によるとイオン性は32%である。●Ⅲ-Ⅴ化合物の例としてIn-Sbを考える。In(5s25p)とSb(5s25p3)のイオン結合では、In3+とSb3–(5s25p6)の電子配置であり、共有結合ではsp3結合を考えIn(5s5p3)とSb+(5s5p3)である。ポーリングの電気陰性度を用いイオン性を計算すると1~3%のイオン性が予測される。表5.6によるとイオン性は32%である。 ●III-V化合物のGa-Asは発光ダイオード、固体レーザー、光電池、携帯電話に、Ga-N(g = 3.39 eV)は高輝度青色発光ダイオードに用いられている。 ●重要課題可視光を用いた太陽電池、可視光の全領域での光伝導体素子には、可視光の全領域(1.05~3.25 eV)か少し小さめのバンドギャップを必要とする。
5.6)15族元素(窒素族元素)N, P, As, Sb, Bi 非金属元素はN, P、 ●窒素N(nitrogen, N2) 空気中の78%, 沸点77K 反応性低い(NN), 寒剤(食品、急速冷凍、受精卵保存) ●生物にとっては非常に重要でアミノ酸やタンパク質、核酸塩基など。これらを分解すると生体に有害なNH3となるが、動物(特に哺乳類)は窒素を無害で水溶性の尿素として代謝する。しかし、貯蔵はできないためそのほとんどは尿として体外に排泄する。そのため、アミノ酸合成に必要な窒素は再利用ができず、持続的に摂取する必要がある。 ●多くの生物は大気中の窒素分子を利用できず、微生物などが窒素固定によって作り出す窒素化合物を摂取することで体内に窒素原子を取り込んでいる。 ●重要課題:N2の容易な解離法の開発、NOxの無害化
非共有(孤立)電子対 N 不対電子 2p sp3 2s 1s 1s NH3
ヒドラジン NOx 笑気 ●リンP (phosphorus,地殻濃度1000ppm):リンの用途 の7割は肥料。最も一般的な白リン(毒性強い、P4型正四面体、透明なロウ状固体で発火しやすい)を空気のない状態で300℃に加熱すると赤リン(毒性弱い、マッチの摩擦面)となる。白リンを燃やすと五酸化二リン(P2O5)を与える。 ●P2O5は極めて優れた乾燥・脱水剤である。P2O5を水中で加熱するとオルトリン酸(H3PO4)となり、H3PO4は金属表面に金属腐食を守る不溶性薄膜を形成するので、自動車車体塗装前の車体のリン酸処理に用いられる。
●リン酸のCa塩のCa(H2PO4)2は水に可溶で肥料やガラスの製造原料である。さらにCaHPO4となると、不溶性で歯磨き粉の研磨剤となる。Ca5(PO4)3(OH)はハイドロキシアパタイトと言い、脊椎動物の歯や骨を校正する主成分で、虫歯の治療や人工骨など外科医療などに利用される。●リン酸のCa塩のCa(H2PO4)2は水に可溶で肥料やガラスの製造原料である。さらにCaHPO4となると、不溶性で歯磨き粉の研磨剤となる。Ca5(PO4)3(OH)はハイドロキシアパタイトと言い、脊椎動物の歯や骨を校正する主成分で、虫歯の治療や人工骨など外科医療などに利用される。 ●生体内では、遺伝情報の要である DNA や RNA のポリリン酸エステル鎖として存在するほか、生体エネルギー代謝に欠かせない ATP(次頁)、細胞膜の主要な構成要素であるリン脂質など、重要な働きを担う化合物中に存在している。また、脊椎動物ではリン酸カルシウムが骨格の主要構成要素としての役割も持つ。このため、あらゆる生物にとっての必須元素であり、農業においてはリン酸が、カリウム・窒素などとともに肥料の主要成分である。
アデノシン三リン酸とは生物体で用いられるエネルギー保存および利用に関与するヌクレオチドであり、すべての真核生物がこれを直接利用する。生物体内の存在量や物質代謝における重要性から「生体のエネルギー通貨」とされている。略記として ATP(Adenosine Triphosphate) が一般的に用いられる ATP
●無機As(arsenic)は有毒(しかし、形状依存が大きく三酸化二ヒ素は毒性をもちながら急性骨髄性白血病治療薬である。有機ヒ素化合物は毒性が弱くサルバルサンは薬として、かって使われた)。ファンデルワールス半径や電気陰性度等さまざまな点でリンに似た物理化学的性質を示し、それが生物への毒性の由来になっている。●無機As(arsenic)は有毒(しかし、形状依存が大きく三酸化二ヒ素は毒性をもちながら急性骨髄性白血病治療薬である。有機ヒ素化合物は毒性が弱くサルバルサンは薬として、かって使われた)。ファンデルワールス半径や電気陰性度等さまざまな点でリンに似た物理化学的性質を示し、それが生物への毒性の由来になっている。 ●Sb(antimony)は非常に毒性が強い。俗説に「ある修道会で豚にアンチモンを与えたら(駆虫薬として働き)豚は丸々と太った。そこで栄養失調の修道士に与えたところ、太るどころではなく死んでしまった。それゆえアンチ・モンク(修道士に抗する)という名が与えられた」というものである。 ●AS, Sb, Biは半金属である。
●Bi(bismuth)常温で安定に存在し、凝固すると体積が増加する。ビスマス化合物には医薬品の材料となるものがあり、他の窒素族元素(As, Sb)の化合物に毒性が強いものが多いことと対照的である。医薬品(整腸剤)の原料として、日本薬局方に収載されている。単体のBiと他の金属(Cd、Sn、Pb、Inなど)との合金は、それぞれの金属単体より低い融点となる。このため、鉛フリーはんだに添加されたり、あるいはより低温で溶けるウッド合金のような低融点合金に使われる。 ●Biは大きな熱電効果を示す物質であり、特にTeとの合金は熱電変換素子として実用化されている。化合物としては、銅酸化物高温超伝導体の1成分としても用いられ、Biを含む超伝導物質はしばしばビスマス系高温超伝導物質または単にビスマス系と呼ばれる。 ●高比重・低融点で比較的柔らかく無害である事から鉛の代替として注目され、散弾や釣り用の錘、鉛・Cdの代替として黄銅への添加剤、ガラスの材料などとして用いられている
5.7)13族元素 ホウ素(Bboron) ●単体は黒みがかっていて、非常に硬く、単体元素としてはダイヤモンドに次ぐ硬度9.3を示す。半導体の性質を持つ。 ケイ素にドープしp型半導体。 ●身近な用途で使用される場合は、ホウ砂やホウ酸の状態であることが多い。 ホウ酸(boric acid)はホウ素のオキソ酸であり、殺菌剤、殺虫剤(ホウ酸団子としてゴキブリ駆除) 、医薬品(眼科領域)、難燃剤、原子力発電におけるウランの核分裂反応の制御、そして他の化合物の合成に使われる弱酸の無機化合物である。化学式はH3BO3、時にB(OH)3とも書く。常温常圧では無色の結晶または白色粉末で、水溶液では弱い酸性を示す。
ホウ砂:塩湖が乾燥した跡地で産出することが多い。古くはチベットの干湖からヨーロッパへもたらされ、特殊ガラスやエナメル塗料の原料だった。19世紀から20世紀にかけてはアメリカ大陸西部においてデスヴァレーなどの産出地が相次いで発見された。今日では、アメリカ・ロシア・トルコ・アルゼンチンのほか、イタリアのトスカーナ地方やドイツなどでも産出される。日本ではほとんど産出されない。ホウ砂:塩湖が乾燥した跡地で産出することが多い。古くはチベットの干湖からヨーロッパへもたらされ、特殊ガラスやエナメル塗料の原料だった。19世紀から20世紀にかけてはアメリカ大陸西部においてデスヴァレーなどの産出地が相次いで発見された。今日では、アメリカ・ロシア・トルコ・アルゼンチンのほか、イタリアのトスカーナ地方やドイツなどでも産出される。日本ではほとんど産出されない。 ホウ砂の利用 陶芸用の釉薬溶解剤、ガラスに混ぜると熱衝撃や化学的浸食に強いホウケイ酸ガラス(ビーカー、フラスコなど)となる、耐熱ガラスなどの原料、水溶液は弱アルカリ性となり、洗浄作用・消毒作用があるため洗剤や防腐剤、目の洗浄・消毒、銀塩写真の現像液のアルカリ調整剤、ホウ素がポリマーを架橋しゲル化する反応を利用し理科の実験でのスライム、植物の必須微量要素であるホウ素の肥料。