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7 ・日本の植民地拡大と民族. 2011.06.02. 関東学院・文化人類学(民族誌). 【 前回 】 ここ まで を踏まえて考えてみる. 外国は、物理的にも思いがけず近いし、交通機関やメディアの発達により、ますます近しいものになっている 実際には 200 ~ 300 万人もの外国人が国内には暮らしている 年間 4 万組近い国際結婚が成立し、さまざまな民族的出自を持った子供が生まれている もともと日本列島に人間はいなかったから、すべての日本人は(いつの時代かはともかく)「渡来人」の末裔
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7・日本の植民地拡大と民族 2011.06.02. 関東学院・文化人類学(民族誌)
7・日本の植民地拡大と民族 【前回】ここまでを踏まえて考えてみる • 外国は、物理的にも思いがけず近いし、交通機関やメディアの発達により、ますます近しいものになっている • 実際には200~300万人もの外国人が国内には暮らしている • 年間4万組近い国際結婚が成立し、さまざまな民族的出自を持った子供が生まれている • もともと日本列島に人間はいなかったから、すべての日本人は(いつの時代かはともかく)「渡来人」の末裔 ……であるにもかかわらず、どうしてわたしたちは「日本は単一民族国家である」というような感覚をもってしまうのだろうか?
7・日本の植民地拡大と民族 「日本人」とはいつを基点にするか • 「親が日本人だから自分も日本人」だろうか? • 10代=250年遡ると2の10乗=1,024人、渡来人がやってくる頃の1,500年=60代遡ると2の60乗=100京人について「日本人」チェックをするのか? • 日本列島にヒトがまだ渡ってくる前=4万年前を基点にすれば、そもそも全員が「渡来人」=100%がエスニック・マイノリティ • 現状の「日本人」に最も近い定義は「明治維新直後1872年壬申戸籍に登録された者の末裔」=1872年が基点 • わたしたちの多くが「日本国籍」のパスポートをもらえ、自分が「日本人である」と特に疑問もなく思っていられる根拠はここにある • これよりあとに「入ってきた」ひとたちが、わたしたちの感覚では「外国人」あるいは「他民族」ということになる • アイヌしかり、琉球しかり、台湾・韓国しかり、闘莉王しかり
7・日本の植民地拡大と民族 日本の勢力圏拡大と国家形成 (1) • 1869年 北海道を領有……北海道アイヌ • cf. 榎本武揚「北海道共和国」(1868年10月~1869年5月) • 1871年 琉球(沖縄)を領有……琉球エスニック・グループ • このことが、それまで既に多様であった旧幕藩体制域の間の差異よりも、ずっと大きな差異を国家体制内に組み込む嚆矢となった • 大きな差異の前には、小さな差異は相対的に見て大した問題ではなくなる • 18/19/20歳同士で比べているところに60歳のひとがやってくるとどうなるか? • 以後、日本は多民族帝国への道を進み始める
7・日本の植民地拡大と民族 日本の勢力圏拡大と国家形成 (2) • 1875年 千島列島を領有・樺太を放棄 • 地図は色が塗り変わった • そこに住んでいた「ひと」はどうなったのだろう? • 1875年 小笠原列島を再領有(以前は1861-1863年)……アメリカ系・イギリス系 • 1895年 台湾を領有……台湾漢人および台湾原住民
7・日本の植民地拡大と民族 日本の勢力圏拡大と国家形成 (3) • 1905年 南樺太を領有……ウィルタ(オロッコ)・ニヴフ(ギリヤーク)・サハリン=樺太アイヌ • 1910年 大韓帝国を併合……韓民族/朝鮮民族 • 1914/22年 南洋群島(ミクロネシア)……チャモロ(スペイン系)とカナカ(それ以外) • 1931年 満洲国
7・日本の植民地拡大と民族 日本の勢力圏拡大と国家形成 (4) • 1941年 香港占領 • 1942年 シンガポール(英領)、インドネシア(蘭領)、ビルマ(英領)、フィリピン(米領)、ニューギニア(豪領)、ソロモン諸島(英領)、ギルバート・エリス諸島(英領)、ナウル(国連委任統治領)、アリューシャン列島(米領)を相次いで占領
7・日本の植民地拡大と民族 敗戦による領土(とその住民)の喪失(1) • 沖縄は米軍政下へ(1950年民政移行・1972年5月15日「復帰」) • 千島列島はソヴィエトへ返還 • 小笠原は米軍占領下へ(旧島民は戦時中に強制引揚済~1946年欧米系住民「帰島」・1968年6月26日「返還」)
7・日本の植民地拡大と民族 敗戦による領土(とその住民)の喪失(2) • 台湾は中華民国へ返還 • 南樺太はソヴィエトへ返還 • 朝鮮は米ソ両軍政下へ(1945年12月米英ソ3国の信託統治下へ、1948年8月大韓民国・1948年9月朝鮮民主主義人民共和国が相次いで成立、南北分断へ~1950年朝鮮戦争)
7・日本の植民地拡大と民族 敗戦による領土(とその住民)の喪失(3) • 南洋群島は米軍占領下へ(1947年国連信託統治下へ、以後ミクロネシア連邦設立をめざすが、マリアナ諸島はアメリカ自治領・マーシャル諸島は1979年自治政府~1986年独立、ベラウ(パラオ)は1994年独立、残るヤップ・チュウック(トラック)・ポーンペイ(ポナペ)・コシャエでミクロネシア連邦が1986年独立)
7・日本の植民地拡大と民族 敗戦による領土(とその住民)の喪失(4) • 満洲国は崩壊、中華民国~中華人民共和国へ • 香港はイギリスへ返還 • シンガポールはイギリスへ返還、1963年マレーシア連邦の1州として独立、さらに1965年マレーシア連邦から追放され1国として独立 • インドネシアは直後にオランダからの独立戦争に入り1949年独立
7・日本の植民地拡大と民族 敗戦による領土(とその住民)の喪失(5) • ビルマはイギリスへ返還、1948年独立 • フィリピンはアメリカへ返還、1946年独立 • ニューギニア(東部)はオーストラリアに返還、1975年パプアニューギニアとして独立 • ソロモン諸島はイギリスに返還、1978年独立
7・日本の植民地拡大と民族 敗戦による領土(とその住民)の喪失(6) • ギルバート・エリス諸島はイギリスに返還、1978年エリス諸島がツヴァル、1979年ギルバート諸島がキリバスとして独立 • ナウルは国連信託統治領、1968年独立 • アリューシャン列島はアメリカに返還
7・日本の植民地拡大と民族 なぜ「単一民族国家」のように思うのか • 以上の膨張過程を通じて、日本は戦前において「多民族帝国」化したが、敗戦により、海外領土とともに「他民族も全て喪失した」と考えられた • 実際にはそれは間違い • 地図の色の塗り替えとともに、人間は移動する:たとえば樺太から北海道へ、内地日本から外地朝鮮へ、外地朝鮮から内地日本へ • 結果として、さしひき「もともとの大和民族」だけが残ったという「単一民族幻想」が、戦後になって作られた • 戦後の経済成長に伴って、韓国・中国・台湾など東アジアから、フィリピン・インドネシア・タイなど東南アジアから、インド・ネパール・パキスタンなど南アジアから、イラン・トルコなど西アジアから、ブラジル・ペルーなど南アメリカから、多くの外国人が日本国内で働くようになっているが、依然として彼ら彼女らは「見えない」存在であり続けているのかもしれない