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20080117 全経済・産業技術総合研究所労組@つくば 『 成果主義とメンタルヘルス 』. メンタルクリニックみさと 天笠 崇 (京都大学医学部社会健康医学). お話しする内容. 拙著 『 成果主義とメンタルヘルス 』 (新日本出版社)を書いた理由 そのおおまかな内容 働く者のメンタルヘルス改善に足りないこと. 過労自殺 にいたる 経過. 昇進・転勤・配転・リストラ. 2 W -2 M -8 M 前. 顕性発症. 5-11-18 M 前. 自殺. 精神科医. 長時間過重労働. 生活上の出来事. 11-13-16時間 / 日以上. 健診. 産業医.
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20080117全経済・産業技術総合研究所労組@つくば『成果主義とメンタルヘルス』20080117全経済・産業技術総合研究所労組@つくば『成果主義とメンタルヘルス』 メンタルクリニックみさと 天笠 崇 (京都大学医学部社会健康医学)
お話しする内容 • 拙著『成果主義とメンタルヘルス』(新日本出版社)を書いた理由 • そのおおまかな内容 • 働く者のメンタルヘルス改善に足りないこと
過労自殺にいたる経過 昇進・転勤・配転・リストラ 2W-2M-8M前 顕性発症 5-11-18M前 自殺 精神科医 長時間過重労働 生活上の出来事 11-13-16時間/日以上 健診 産業医 一般医 生活上の出来事 「一見」就労を継続 身体的不調 言動の変化 家族の対処 事業所の対処 仕事中心→対処が分からない(→受診勧める) 新規課題・叱咤激励・鼓舞 ◆Amagasa T, et al.Karojisatus or work-related suicide: a social problem in Japan. WPA2002.
昔の名前で出ています? • 健康情報学の前進は、医療システム情報学と言いました...。 • 前福井次矢教授(現聖路加国際病院院長)の下、こんなレポートを読んだりしてました。 • 医療システム ⇒健康結果
さまざまな取組み(2000年~) ★電通過労自殺裁判原告勝訴と多額の賠償金支払い⇒ ①リスクマネジメントとしてのメンタルヘルス対策(大企業) ②さまざまな指針や通達を公表(旧労働省・現厚生労働省) ③人事労務担当者や衛生管理者向け、中災防等で各種セミナー(大阪商工会議所メンタル) ④産業医講習会でメンタルヘルスが強化 ⑤医師会雑誌特別号等で精神障害の診断・治療等の啓発 ⑥うつ病学会の設立、各学会でシンポやワークショップ開催 ⑦多数のEAPプロバイダーが事業展開 ⑧2006年4月労働安全衛生法および規則の改訂 ⑨2006年6月自殺対策基本法で「社会的な取組み」と明記
気分感情障害の患者数、受療率ともに過去10年間で約2倍 vs 精神科・神経科・診療内科医数は1.2倍 ⇒ 市内に4つ精神科医療機関があるが、新患予約は1~2ヶ月先がザラ 心の危機状況(健康結果)の例
うつ病の遺伝要因と環境要因 近年の分子生物学的研究によって、うつ病発症のメカニズムが解明されてきている。 「メタ解析研究」によれば、うつ病発症に対して遺伝要因3~4割、環境要因6~7割。 自殺企図に対して、遺伝要因2割、環境要因8割とする研究も見られる。
心の危機状況(健康結果の例) リストラ元年 成果主義元年 非正規雇用元年 過去10年間に働く者の環境要因はどう変わったか? 1995年
成果主義賃金制度とメンタルヘルス • 成果主義賃金制度とは... 1)1期ごと、半期ごとなどに、個別目標管理を立て、 2)目標達成度=成果の評価を賃金に反映させる... 3)賃金=基本給[成果給]+賞与[成果を反映] 4)1995年が「成果主義元年」と呼ばれる 5)年功型の生活保障賃金体系[年功主義]を廃止 といったようなカンジ。 ・ 「新しい『日本的経営』」(日経連1995)
←過去3年間に業績・成果に対応する賃金部分を拡大する賃金制度改定を行った企業数の割合[出所] 厚生労働省「賃金労働時間制度総合調査」(平成8年)「就労条件総合調査」(平成16年) 「成果主義賃金制度の現状」 ○業績・成果に対応する賃金部分を拡大する賃金制度の改定を行っている企業数の割合は、増加している。○大企業の4割以上で、いわゆる「成果主義賃金」制度への改定が2004(平成16)年度段階で実施されている(上図)○大企業の8割以上で「成果主義賃金制度」が実施されている(下図)。○つまり、ほとんどの大企業で成果主義賃金制度が導入されていると考えてよい。 資料出所: 平成16年度「就労条件総合調査」(厚生労働省)
○成果主義本来の導入目的;「個人の成果が処遇に反映される良い制度だ」「個人のやる気を引き出す制度だ」「会社全体の業績を向上させる制度だ」に対し肯定派が過半数以上か過半数に近い結果。○「人件費削減のための制度だ」では肯定派≒と否定派○「職場のチームワークを乱す制度だ」「導入している成果主義は成功している」では、否定派が肯定派をはるかに上回る。「導入している成果主義は成功している」;肯定(12.3%)/否定(40.1%)、成功していないと考えている従業員が圧倒的多数○運用上の課題については、企業側は過小評価○成果主義本来の導入目的;「個人の成果が処遇に反映される良い制度だ」「個人のやる気を引き出す制度だ」「会社全体の業績を向上させる制度だ」に対し肯定派が過半数以上か過半数に近い結果。○「人件費削減のための制度だ」では肯定派≒と否定派○「職場のチームワークを乱す制度だ」「導入している成果主義は成功している」では、否定派が肯定派をはるかに上回る。「導入している成果主義は成功している」;肯定(12.3%)/否定(40.1%)、成功していないと考えている従業員が圧倒的多数○運用上の課題については、企業側は過小評価
成果主義が労働現場にもたらすもの 成果主義賃金への見直しだけでは要求度・裁量度・支援度ともに悪化が必死⇒精神疾患の罹患が増えてしまう
過半数の企業で「進捗管理の強化」を図り、「部門間のコミュニケーション」や「意思決定のスピード化」を通じ、高い業績の達成を図ろうとしてきた。しかし、それは同時に、「仕事の集中」や「労働時間の増大」となって「仕事のゆとりの無さ」や「仲間と協力して仕事をしにくく」なることや「部下や後輩を育てる」ところにまで手が回らない事態を産み出し、その結果、「精神的ストレスの増大」や「自己都合で離職する社員の増加」となっていることを特に従業員側は強く認識するようになっている。過半数の企業で「進捗管理の強化」を図り、「部門間のコミュニケーション」や「意思決定のスピード化」を通じ、高い業績の達成を図ろうとしてきた。しかし、それは同時に、「仕事の集中」や「労働時間の増大」となって「仕事のゆとりの無さ」や「仲間と協力して仕事をしにくく」なることや「部下や後輩を育てる」ところにまで手が回らない事態を産み出し、その結果、「精神的ストレスの増大」や「自己都合で離職する社員の増加」となっていることを特に従業員側は強く認識するようになっている。
個人業績や会社業績を反映して給与が増大したと回答する従業員は、個人業績に関して2割、会社業績に関してはわずか1割です。勤続年数が近い従業員間の賃金格差は、3割の従業員がこの3年間で拡大したと答えています。そして、賃金の満足度に関しては、満足していると答えた従業員は2割に留まり、逆に、不満であると回答した従業員が6割を超えています。 個人業績や会社業績を反映して給与が増大したと回答する従業員は、個人業績に関して2割、会社業績に関してはわずか1割です。勤続年数が近い従業員間の賃金格差は、3割の従業員がこの3年間で拡大したと答えています。そして、賃金の満足度に関しては、満足していると答えた従業員は2割に留まり、逆に、不満であると回答した従業員が6割を超えています。 一方、『平成18年版 労働経済白書』(厚生労働省)によると、賃金カーブは全体として年功的な要素を保持しているものの、男性一般労働者の30~40代で賃金格差が拡大しており、業績・成果主義の広がりによるものと分析しています。
「日本型修正」成果主義制度 「純粋アメリカ型」成果主義 従来型年功主義 「純粋アメリカ型」で、よく指摘される、雇用関係悪化、労働強化・長時間労働化、管理強化、職場関係・処遇悪化、裁量低下、努力に見合った評価の不均衡拡大が顕著に見られる! 労働ストレス悪化度は 日本型修正<従来型年功<純粋アメリカ<衰退企業の順、と言える。
成果主義によって高まるストレス ① 残業時間が増え長時間労働となる。 ② ノルマと進捗管理が厳しくなって「仕事の要求」が高まる。 ③ 「裁量性」が乏しくなる。 ④ 上司や同僚とのコミュニケーションが悪化し「職場の支援」も悪化する。 ⑤ 賃金・仕事・訓練や研修といった側面に対する満足や納得が低下する。 ⑥ その結果、全体として「評価に対する不満」を高める。 ⑦ 労働者は一人でする仕事が増え個別化が進む。 ⑧ 雇用関係においても個別労務管理化が進み、離・退職圧力が増す。 ⑨ 成果評価は人格の序列化、ハラスメントの増加に通じる。
○週50時間以上の労働者割合は日本が約3割でトップ。○週50時間以上の労働者割合は日本が約3割でトップ。 ○週の実労働時間が長くなるほど、「睡眠時間が必要なだけとれる」労働者や「疲れやストレスがない」労働者が確実に減っている。 ○特に、週の労働時間が60時間以上、したがって月の残業時間が80時間以上になると、疲れやストレスを感じない労働者はほとんどいない。
◆仕事の要求(Job demand)、裁量性(Control)、職場の支援(support);JDCモデル ○「仕事の要求」「非常にたくさんの仕事をしなければならない」「時間内に仕事が処理しきれない」「一生懸命働かなければならない」「かなり注意を集中する必要がある」...といった仕事ほど、「仕事の要求」が高い仕事○「仕事の裁量」「自分のペースで仕事ができる」「自分で仕事の順番・やり方を決めることができる」「職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる」仕事ほど、「仕事の裁量」が高い仕事○「職場の支援」「上司」と気軽に話しができ、「上司」は困ったとき頼りになり、「上司」が個人的な問題を相談したらよく聞いてくれるほど、上司からの「仕事の支援」が高い
納得感>公平感>合理感 会社の給与制度の合理感よりも仕事配分の公平感の方が精神面に与える影響が大きく、仕事配分の公平感よりも評価の納得感の方がダメージが大きいというものでした。
◆「努力・報酬不均衡」;ERIモデル努力(Effort)、報酬(Reward)、不均衡(Imbalance)◆「努力・報酬不均衡」;ERIモデル努力(Effort)、報酬(Reward)、不均衡(Imbalance) ○「努力要素」を測定する項目は6項目です。 ○報酬には3種類○「尊重報酬」で、5項目。自分の努力を周囲の人々(上司や同僚)が認めてくれているかどうかを評価するもので、社会的報酬○「金銭・地位」で4項目。昇進の見込みの程度、教育やトレーニングの程度に見合った職務かどうか、賃金やサラリーが適当かどうか。○「職の安定性」 ※努力項目(6項目)と報酬項目(11項目)からなる質問に答えてもらい、その結果を数値化。努力に見合った報酬を得ていると感じられれば、努力と報酬は均衡状態にあるという。努力に比べて報酬が少ないと感じるほど、ERIの値は大きくなる。
Mean sd 2.76 .39 2.67 .49 2.50 .63 2.40 .60 2.25 .75 2.20 .80 2.15 .65 1.71 .61 1.67 .67 1.63 .63 1.17 .28 2.08 .43 Means were calculated by each points related with the suicide; namely, 3 to remarkable strong, 2 to very strong, and 1 to strong relation. Uehata T, Amagasa T. Case studies of workrelated suicide in Japan.ICOH Conference,2005
ハラスメントとうつ病 ◇「職場いじめ」はハラスメントとほぼ同じ内容を扱っている ■「職場いじめの経験」で、「2回」とあるのは、2回行った調査の両方で「ハラスメントを経験している」と回答した、長期にハラスメントを受けている労働者を意味している。職場いじめ(ハラスメント)は、うつ病に対して、1回の経験でも2.26倍と「中程度の原因」、長期に続く場合「強い原因」として働くことが、この研究で解明されていると解釈できます。
大きさ不明 弱い原因(RR<2) 中度の原因(RR:2~4) 強い原因(RR>4) 労働関連自殺の「因果の鎖」 HRM変化 成果主義 長時間労働 希死念慮 要求度↑ ストレイン 裁量度↓ 自殺 支援度↓ うつ 努力↑ ERI↑ 尊重↓ 金銭・地位↓ 報酬↓ うつ病 職の安定↓ 短期長期 ハラスメント
真の「ワーク・ライフ・バランス」(識者・労働者) vs 「多様な働き方」論(財界)真の「ワーク・ライフ・バランス」(識者・労働者) vs 「多様な働き方」論(財界)
ホワイトカラー・エグゼンプション • 残業代支払いの適応除外⇒「残業代なし」法案 • 「労働時間で計れない成果重視」 • 成果を出すために仕事量を増やす • 自律的労働なので仕事の個別化が進む • 年収要件400万円以上ならば裁量も低下するものが増える • 現在支払われている残業代が支払われない • 気に入らない労働者や上司の意に沿わない労働者排除のツール • 労働関連精神疾患や自殺の労災補償対象からも除外?
大きさ不明 弱い原因(RR<2) 中度の原因(RR:2~4) 強い原因(RR>4) 労働関連自殺の予防戦略 HRM変化 成果主義 HRMの改善 長時間労働 希死念慮 要求度↑ ストレイン↑ 裁量度↓ 自殺 支援度↓ うつ状態 努力↑ ERI↑ 尊重↓ 治療 金銭・地位↓ 報酬↓ うつ病 職の安定↓ 短期長期 ハラスメント ハイリスク・ストラテジー ストレス低減
労働衛生行政の動向を知って活かす • 1988年:トータルヘルスプロモーションプラン(THP) • 1992年:快適職場形成促進事業:労安法第71条の2~4 • 1999年:「精神障害等の労災認定に係わる専門検討会報告書」 「精神疾患等の公務上災害について」通達:地公災、人事院 • 2000年: 「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」 • : 「脳・心臓疾患の労災認定基準の改正」 • 2001年:「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき基準について」通達 • 2002年2月:「過重労働による健康障害防止の総合対策」 • 2002年4月:「新VDT作業のガイドライン」 • 2002年12月:「自殺予防に向けての提言」(自殺防止有識者懇談会報告) • 2004年6月:労働者の疲労蓄積度チェックリストの公開 • 2004年10月:「心の健康問題で休業した労働者の復職支援の手引き」 • 2006年3月:労働者の心の健康の保持増進のための指針 • 2006年4月: 改定労働安全衛生法等の施行
長時間労働対策 • 2006年4月より、改正労働安全衛生法(66条の8・9項)および労働安全衛生規則(52条)を活かす • 「月間残業時間が100時間を超える者で、心身に疲労の蓄積が認められ、労働者から申し出のあった場合、事業主は産業医等の面接指導を当該労働者に受けさせ、必要な措置を講じなければならない」とされ、大企業を中心に実施が進んでいる。
長時間過重労働対策の要点 ○面接指導~ハイリスク・ストラテジー(高危険者対策) ○職域の心の健康の底上げ~ポピュレーション・ストラテジー(集団全体志向の対策) ◆改正労働安全衛生規則(22条の9・10項) ○衛生委員会の重要事項「長時間労働による健康障害の防止対策の樹立、精神的健康の保持増進を図る対策の樹立」が新設この新設された2項目を、衛生委員会で実現させることが重要!
過重労働対策 ◆仕事の要求を下げ、裁量性を上げ、職場の支援を増やすこと~労働者一人ではできない、労働組合が必要不可欠 ◆仕事量の軽減と納期の適切な管理 ※長時間労働対策と過重労働対策はセットで!
努力・報酬不均衡対策 ○長期雇用の堅持⇒[職の安定]項目が改善⇒ERIが改善 ○評価と目標管理のシステムの改善 ①個人の成果だけでなく職場単位・部門単位の成果を賃金に反映させる ②経営幹部にも成果主義を適応 ③仮に減給となっても暮らしが成り立つ最低ラインを設定 ④努力したプロセスも評価対象とする ⑤評価の透明性と納得性を高める ⑥評価者トレーニングをきちんと行う ⑦フィードバック面接をしっかり持つ ⑧個別目標管理の立て方についてトレーニングを受けられるようにする ⑨個別目標管理を立てる際上司が支援する ⑩評価期間の途中で達成度を評価し未達成が予想される際に上司が支援する ⑪職場単位・部門単位の目標を単位ごとに話し合って立てる ⑫「ワーク・ライフ・バランス」に通じる目標を入れるべき ⑬経営幹部については、「健康な職場」実現に向けた目標を入れさせる ⇒ 要するに、「努力が報われる仕事」に変える取り組みが求められる。
ハラスメント対策 ○法的規制 ○ハラスメント対策を、企業の経営管理責任として明確に位置づける ○ハラスメントを「起こさない、許さない」ことを、社訓や社是に掲げさせる ○「実際の予防計画」 ・ハラスメントに関する講演会を開き社員全員の関心を高める ・産業医や労働組合代表といった人々を対象に「社内相談員」養成研修会を実施する ・経営幹部や人事部長などを対象に「ハラスメントの予防」「その発見と対処」をテーマにした研修を行い、「社内憲章」を作って社員全員に衆知する ・ハラスメント対応チームとその相談対応窓口を設置する。
職域における健康づくり(THP)実践と研究を兼ねて-EAPセンターモデルで職域における健康づくり(THP)実践と研究を兼ねて-EAPセンターモデルで 心の健康づくり計画策定の支援 1.結果返し 事業場全体と個人へ 2.推進員の育成 3.教育・研修 4.電話・メール相談 5.受診勧奨など 実態調査(心の健診)の実施 フォローアップ調査 共済・健保組合、事業所管理部、労働安全衛生委員会、産業医・精神科医療機関
「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」http://www2.mhlw.go.jp/kisya/kijun/20000809_02_k/20000809_02_k.html「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」http://www2.mhlw.go.jp/kisya/kijun/20000809_02_k/20000809_02_k.html 1.セルフケア:教育・研修・職場の支援 3.事業場内スタッフによるケア 産業医、衛生管理者 保健師、心の健康づくりスタッフ 人事労務管理者 2.ラインによるケア:職場環境改善・相談対応 4.事業場外資源によるケア 4つのC
「1次予防」対策のインパクト • 成果主義がメンタルヘルスに悪いことは社会調査・医学研究からほぼ証明されている。 • 予防医学の知識を使えば、職域から発生するうつ病の8割、自殺の4割を減らし得る。⇒裏返せば業務起因性 • さまざまな取組みにも関わらず減らないうつ病・躁うつ病Ⅱ・自殺等を減らすには労組の取組みに期待。 • 成果主義賃金制度に変わるHRMはあるのか? 本制度の悪影響を減らす対策が絶対必要。常に見直し作業を繰り返すべき。 たとえば、経営者が会社から発生する精神疾患を5割に減らすといったビジョンを明言する。労働安全衛生委員会等に全権委任する。←メンタルヘルス対策は企業の経営責任。
心の危機状況(健康結果の例) リストラ元年 成果主義元年 非正規雇用元年 1995年
うつ病の急増vs精神科医微増 • 「3つの元年」の成果主義導入に注目し、うつ病との関連性について考察してきた。 • 成果主義賃金制度は「個別目標管理制度」なので、目標達成志向的なライフイベントが日常的に用意されていることになり、躁うつ病Ⅱ型を増やし得る。 • 1980年代から続く、医療費を中心とした社会保障関連費用抑制政策の一環として医師数抑制政策を取ってきた。(世論によって、医学部入学定員数をシブシブ増やしたが...。)
新自由主義化の実績 • 全世界の経済的成長を促進することに概して失敗 • 「略奪による蓄積」 ①共有財産の私有化と商品化、②投機的・略奪的な金融化、③債務危機の創出・管理・操作、④国家による下層から上層階級への再分配 • あらゆるものの商品化(労働、土地、紙幣、年金、医療、労災補償...) • 環境の悪化 引用:『新自由主義』、D・ハーヴェイ著、渡辺治監修、作品社2007
日本の新自由主義改革遂行過程(渡辺治) 「社会主義国」日本(レナード・ショッパ)、<開発主義国家>(渡辺)から。 第1期 細川内閣期(1993.8~);政治枠組みの形成=小選挙区制中心の選挙制度改革、社会党と既存自民党の体質を変える/平岩レポート、「新時代の『日本的経営』」1995 第2期 橋本内閣期(1996~);本格的遂行期=「6大改革」、医療費を中心とする社会保障費の削減 98年参院選大敗で退陣。 第3期 小渕・森内閣期:漸進期=中央省庁再編、経済財政諮問会議 第4期 小泉時代:急進的実行政権=不況下の厳しい財政支出抑制、公共部門の民営化、銀行の不良債権処理の強行と多国籍企業本位の産業構造の再編⇒当然の結果、既存社会の安定は崩れ、社会統合の破綻が顕在化/「格差社会」「ワーキングプア」の普及、犯罪増加、家族崩壊 現在 新保守主義政権の誕生と頓挫? メンタルヘルスの最前線に立ちはだかっていたのは、新自由主義と新保守主義...(!?)
「格差」とメンタルヘルス • 新自由主義化の実績(天笠):新自由主義は全世界の精神健康を促進するどころか悪化させている。 • 米国人は30年前に比べて幸福を感じていない(イタリアの研究チーム;ロイター20070617) • 「過労自殺」輸出大国? ルノーテクノセンター(0702)、プジョー(0707) ばらつきの大きいほど平均値が小さい指標 ばらつきの大きいほど平均値が大きい指標 格差が 職場の活力を削ぐ
Class/welfare regime model(階級/福祉体制モデル)Class/welfare regime model(階級/福祉体制モデル) ABCD 収入格差、貧困、社会 資源へのアクセス格差 (職業、教育、医療、 居住、移動、栄養 など) 福祉体制 市場 経済のグロー バリゼーション 新自由主義 健康 & 安寧 資本の力 社会統合 (信頼) 経済的富 Coburn D. Beyond the income inequality hypothesis: class, neo-liberalism, and health inequalities. Soc Sci and Med. 2004.
「心の健診」活動(外部EAP) ●労安委員会と労組の共同の取り組みとして、急性期病院の正規看護職200名余りを対象●実態調査⇒個人だけでなく職場単位・看護職全体の結果返しと同時に受診勧奨した●プログラム(メンタルヘルス講演とワークショップ)を提供後、フォローアップ調査を実施●人事配置や職場運営のあり方についても助言を行った 個人職場事業所 受診勧奨 労安 委員会 労働組合 追跡調査 プログラム 提供 実態調査 結果返し
提供プログラムの効果評価は解析中 • 仕事の量的負担の大きい病棟に人員増 • 可能なものはアウトソーシング(ベッドメーキング) • 困難をかかえる病棟師長を管理部がサポート • 病棟ごとに労働時間統計をとって制御 その結果...(?) • 2004年以降、1年目離職ゼロ • 同、メンタル不全を理由の退職ゼロ • フォローアップ調査への参加割合ほぼ100%