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文明論の論点. 北村眞一. 目次. 1.文明と文化の概念 2.文明の環境史 3.文明と環境の倫理 4.エコ都市像 5.文明の衝突. 1.文明と文化の概念. 「文明と環境」という見方. ・人類の生活側から見ると 体の進化限界を脳が補う→「文明化」 自然制約の克服→採取と農耕, 狩猟と家畜化,地上から地下資源 ・環境側から見る 「環境破壊」→野生生物の絶滅 環境汚染,気候変動,自然の略奪. 文明化とは. 食糧確保の効率化(新石器時代) →農耕・家畜 余剰生産・体外備蓄 定住 人口増加
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文明論の論点 北村眞一
目次 1.文明と文化の概念 2.文明の環境史 3.文明と環境の倫理 4.エコ都市像 5.文明の衝突
「文明と環境」という見方 ・人類の生活側から見ると 体の進化限界を脳が補う→「文明化」 自然制約の克服→採取と農耕, 狩猟と家畜化,地上から地下資源 ・環境側から見る 「環境破壊」→野生生物の絶滅 環境汚染,気候変動,自然の略奪
文明化とは 食糧確保の効率化(新石器時代) →農耕・家畜 余剰生産・体外備蓄 定住 人口増加 階級合理社会
都市とは何かビータク(Bietak)エジプト考古学者の定義都市とは何かビータク(Bietak)エジプト考古学者の定義 1.高密度の居住(1haあたり5人以上、人口2000人以上) 2.コンパクトな住居形態 3.非農業共同体 4.労働・職業の分化と社会階層性 5.住み分け 6.行政・裁判・交易・交通の地域中心 7.物資・技術の集中 8.宗教上の中心 9.避難・防御の中心 ( Bietak,M. Urban Archaeology and the Town Problem in Ancient Egypt, Egyptology and the Social Sciences,1979川西宏幸、総論都市と文明、講座文明と環境4都市と文明、朝倉書店1996)
文明の定義(ゴードン・チャイルド(考古学者))文明の定義(ゴードン・チャイルド(考古学者)) 効果的な食料生産 大きな人口 職業と階級の分化 都市 冶金術 文字 記念碑的公共建造物 合理科学の発達 支配的な芸術様式 (チャイルド G.(ねずまさし訳)、文明の起源(上下))、岩波書店1957
文明論の概略(福沢諭吉) 狭き字義に従えば,人力を以て徒に人間の需用を増し,衣食住の虚飾を多くするの意に解すべし. 広き字義に従えば,衣食住の安楽のみならず,智を研き徳を脩めて人間高尚の地位に昇るの意に解すべし. 岩波文庫,P57,1995
文明は歴史を記述する単位 1.人間の精神あるいはその集合体が歴史を動かす主要な契機 2.歴史は進歩,発展するもの 3.西洋や日本を超える普遍的な流れがある (福沢諭吉の思考) 中西輝政,国民の文明史,扶桑社,2003
文明の定義(川西) 食糧生産という経済、人口、階級、都市、公共事業、金属技術などは社会の特徴を表し、社会に関する定義である。 効果的な食料生産、ある種の食糧分配の制度化、これを維持。分業体制、階層化、社会の体制の中に秩序だてる政治システム、中心的役割を担う個人又は機構があり、強制力すなわち公権力を持つ。 文明とは国家という政治システムを持つ社会のことである。 川西宏幸、総論都市と文明、講座文明と環境4都市と文明、朝倉書店1996
文化の定義1 人類にきわめて顕著な特徴としての、この柔軟な適応能力、いいかえれば身体外と思考の中に作り出した様々な技術、慣習、認識や判断の基準などを総称して文化という。従って文化とは行動様式の全体であり、さらにそのような行動を起こさせる判断の体系のすべてでもある。 大貫良夫、人類の始まり、世界の歴史1人類の起源と古代オリエント、中央公論社1998
文化の定義2(人工物派) ・文化とは個人を取り巻く他者及び人工物(アーティファクツ)の全体であり、その際、人工物とは、道具・設備・社会組織・制度・文書情報・常識などである。 (波多野、佐伯) 出典:高取憲一郎、文化と進化の心理学ピアジェとヴィゴツキーの視点、三学出版 2000
文化の定義3(意味派) ・文化とは日常的慣習(たとえば、会話のスクリプト、儀礼、慣行、社会的制度など)や公の意味の構造(たとえばイデオロギーや人間観など)であり、そのような文化の中で人間は行動することにより心はつくりだされる。その心が文化を維持しあるいは変容させる。 出典:定義2と同様
文明の生態史観 文明は「装置系=制度系」であり,「文化はそのデザインの問題」である. 人類は,人間=自然系としての生態系から,人間=装置系としての文明系に進化してきた. 杉田繁治,梅棹文明学を再読する, 文明の生態史観はいま,中央公論p155,2001
文明・文化の定義(辞典) ・世の中が進み、精神的・物質的に生活が豊かである状態。 ・特に「文化」と対立させて、技術や実用に重点がある。物質的な文化。 (岩波国語事典 第五版 1994)
文明と人口 農耕革命:穀物 家畜,灌漑 農業革命: 三圃式→連作 ジャガイモと トウモロコシ (新大陸) 産・エネ革命: 石炭→石油 BC.8000 農耕 革命 BC.5000 都市 革命 1500 農業 革命 1800 産業 革命 1950 石油 日本経済新聞 1999.6.11
文明の画期 人類革命,農業革命 都市革命,精神革命 科学革命,環境革命 革命は氷期に起こる 伊東俊太郎,文明の画期と環境変動, 地球と文明の画期,朝倉書店1996
文明の画期1 寒冷化・乾燥化と農耕普及 安田喜憲,地球と文明の画期,朝倉書店1996
寒冷化:飢饉・伝染病→技術発達 文明の画期2 安田喜憲,地球と文明の画期,朝倉書店1996
メソポタミア文明の盛衰 BC.10,000 洞窟,円形竪穴住居の時代 BC. 8,000 農耕・牧畜,方形の建物 BC. 6,000 農耕牧畜社会,灌漑,集落 BC. 4,000 ウルク,シュメール都市国家 BC. 2,000 アムル人,民族国家,宮殿 BC. 1,000 アッシリア全盛期 BC. 539ペルシャに滅ぼされる 松本健,メソポタミア文明の興亡と画期,朝倉書店1996
グレコ・ローマ文明の盛衰 BC. 1,200 寒冷化,ミケーネ文明崩壊,森林破壊 北方ドーリア人→ギリシア文明 農業:二圃制(秋→冬雨→夏),オリーブとワイン,牧畜 資源食糧不足→植民地開発,移住 BC. 479 ペルシアとの戦争→敗北から勝利へ 人口爆発,森林破壊→湿地→マラリア(蚊) BC.431-404 ペロポネソス戦争(内紛)荒廃国土 森林破壊→マラリアの湿地,ペストへ AD.165 ペスト流行, AD.395 東西分裂,476滅亡 ゲルマン民族大移動 湯浅赳男,環境と文明,新評論1993
伝染病 ペスト:ネズミ,リスなど齧歯類(げっしるい)の病気,ノミが人間へ菌を移す.肺ペストは,患者の痰から.中央アジア,北インド原産. 発病後2−4日で100%死亡. マラリア:ハマダラカの媒介でマラリア原虫による.悪寒熱発作が定期的に起こり,高熱が4時間続き,解熱し,意識障害,腎不全などを併発することがある.
ローマ帝国の滅亡 1)ゲルマン民族の侵入,軍モラル衰退, 背景としての気候の悪化 2)エリート層の欠,奴隷解放人種混合 政治経済運営の失敗,退廃道徳倫理 3)気候変動(ハンチントン) 乾燥,農業の衰退,大土地所有,畜産 土地の荒廃,湿地マラリアの風土病化 高坂正堯,文明が衰亡するとき,新潮社1981
トインビー歴史の研究 困難な環境は人類へ「文明へ向かう刺激」が強く,「挑戦」に「応戦」する事で,文明化は進む. 1)ギリシア:地方国家→世界国家へ 2)中国:世界国家の盛衰の交替 3)ギ中複合:文化統一と政治不統一 4)ユダヤ:国土を持たず,一体感を維持
ジャレッド・ダイアモンド ・地球上で文明化した地域と文明化していない大陸に差があるのはなぜか? ・ユーラシア大陸は,東西に長く,気候,生態系など条件の良い地域があり,そことの情報交流が発展した→文明化が促進された ダイアモンド,銃・病原菌・鉄,草思社2000
文明の興亡 異民族との 争奪・戦争 社会制度 人口増加 伝染病 技術開発 民族移動 資源・ エネルギー 気候変動 生態系破壊
環境思想の分類 テクノ中心主義 エコ中心主義 コルヌ コピアン 自頼心 ソフトテ クノロジー 順応型 環境主義者 ディープ・ エコロジスト T.O’Riordan, 1981, Environmentalism,Pion London (オリオーダン、環境主義) 宇都宮深志、環境理念と管理の研究、東海大学出版会*(*文献1)
1)コルヌコピアン(豊饒の角) ・進歩は科学、テクノロジー及び管理の結果であり、コミットメントと政治的支持があれば、克服できない様な障害物は無いと信じる。 ・環境問題は科学とテクノロジーと人間の知恵で解決できる。 (持続可能な開発、アメニティ) (出典:文献1)
2)順応型環境主義者 ・再配分や環境保護に多少妥協しなければならないことを認める一方では、ラジカルな改革には反対であり、インクリメンタル(漸変的)に対応する。 ・エコ中心主義者の要求に順応することにより妥協をはかる。 (国、自治体、国連) (出典:文献1)
3)エコ中心主義(ディープ・エコロジスト、自頼心ソフトテクノロジー)3)エコ中心主義(ディープ・エコロジスト、自頼心ソフトテクノロジー) ・地球の有限を信じ、技術的過信から離れて、生態学的過程との調和に対し、よりつつましく、人間的なアプローチと地球との真の一体の方向に基本的な態度の変化なしには、生息可能な未来は可能でないことを受け入れる。 ・人間以外のすべての生物などにもそれ自身の生存権を主張する。 .(ガイア仮説、環境の持続性) (出典:文献1)
4)環境思想まとめ 1)人為による環境への影響はある。 2)影響は地域から地球環境へ及ぶ。 3)テクノ中心主義からエコ中心主義環境へ環境イデオロギーがあり、行動している。 4)自然と人間の認識は2種に分ける。3)と関連
1)メドウズ他 成長の限界限界を超えて 1972-19921)メドウズ他 成長の限界限界を超えて 1972-1992 ・地球の資源は限界がある。 ・成長を管理し、持続可能な生態的・経済的安定状態を確立することは不可能でない。 ・あらゆる人々の基本的物的ニーズを満たし、すべての個人の潜在的可能性に機会が平等に与えられ、均衡状態も設計可能である。 出典:限界を超えて、ダイヤモンド社1992
人口と寿命 天然資源 世界モデル出典:成長の限界、ダイヤモンド社1972 環境 農業 土地 食糧 工業 商業 課題:資源枯渇,伝染病,気候変動の組み込み
スタンダード・ラン従来通りに成長して限界に来るスタンダード・ラン従来通りに成長して限界に来る 出典:限界を超えて、ダイヤモンド社1992
シナリオ22倍の資源を使い続けていく 出典:限界を超えて、ダイヤモンド社1992
2)アン・W・スパーン1984 ・都市は「非自然的な」なものでというわけでなく、ちょうど食糧や材木の生産のために農地や森に手を加え、管理するのと同じように、人類が自分たちの必要性から「野生」の自然を改変したものだ。。。人類の欲望によって引き起こされる環境問題は、最古の都市の出現と同じぐらい古い数千年の歴史をもつ。 ・都市は自然である→都市のエコシステム解明 出典:アン・W・スパーン1984、アーバンエコシステム、公害対策技術同友会
3)アーバンエコシステムアン・W・スパーン 自然と共生する都市 19843)アーバンエコシステムアン・W・スパーン 自然と共生する都市 1984
4)品田穣1992文明の生態学 1)文明化(機械道具で効率便利化) ・食料入手の効率化:家畜・耕作→農耕 ・食品の多様化:数百種 ・家庭用道具や刃物の効率化・便利化 2)文明の行きすぎの証拠 ・分散・流出(都市・行動の拡大) ・総合性回復(エコアップ) ・自然保護・回復運動 出典:品田穣1992、文明の生態学、海游社
5)エコポリスのまとめ(内藤) 近年のエコポリスの一般的特徴 ・環境負荷の低減 ・適正なメタボリズム ・資源利用の適正化 ・自然との共生、保全 ・豊かなアメニティ ・アイデンティティ (出典:内藤正明1992、エコトピア、日刊工業新聞)
6)持続する都市ライトマン 1999 1)1人あたりのエコロジカルな影響が少ないか減少させている都市2)1人あたりの富を減少させず生み出している都市3)日との健康の危険性を減少させ、汚染を最小化し、再生可能な資源を最大限に利用している創造的な都市持続する都市ー都市デザインにおける環境計画の運用 Leitmann,J(1999) Sustaining Cities - Environmental Planning Management in Urban Design, McGraw-Hill(出典:海道清信2001、コンパクトシティ、学芸出版)
7)持続可能な経済発展宇沢弘文 ・経済発展が持続可能であるというのは、自然環境の状態が年々一定水準に保たれ、自然資源の利用は一定のパターンのもとに行われ、しかも、消費、生活のパターンが動学的な観点から見て最適、かつ世代間を通じて公平な経路を形成している時であると定義される。 (出典:宇沢弘文2000、社会的共通資本、岩波新書)
5.文明の衝突 ハンチントン:文明の衝突論 諸文明間の衝突は不可避である. ー西洋文明とイスラム文明ー 文明間の対話・交換は不可能! 文化の翻訳,文化の境界,文化の多様性 文化の差異は絶対,文化本質主義
文明の衝突という欺瞞 マルク・クレポン 「国際法にもとづく国際平和」理念 諸文明は個々のアイデンティティを守り,内向的に生成するのではなく,交換の継続,絶え間ない対話の維持から生成するーー開かれた文化
第3の論点 国際法は公正中立に成立したか? 1)歴史的に確認できる人間社会の趨勢 カント「自然の機構」永久平和論 2)国際法の法としての暴力? 大国の都合,西欧社会のパラダイム
環境の国際法の可能性 環境のアジェンダは国際法になり得るか アメリカ文明と西欧文明の衝突 法・権力・暴力を超える「超法」 永遠平和・世界共和国(カント) 普遍的な文明・文化帝国主義 地球の保全に合意できるか